メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「東京五輪・大阪万博」セット いまさら?

日本は低成長・低インフレで十分やっていける国だ。「成長教」と決別を!

原真人 朝日新聞 編集委員

高度成長の半世紀前でさえ、五輪・万博後は景気が冷えた

 安倍政権としてみれば、半世紀前の〈五輪・万博〉セットが「いざなぎ景気」(1965年11月~1970年7月までの57カ月)を導いたように、こんどの五輪・万博も成長の押し上げにつながる、少なくとも国民にそういう期待をばらまけると考えたのだろう。

 半世紀前でさえ、オリンピックや万博が過ぎれば、投資や消費の盛り上がりが極端に減ることで景気は冷えた。それでも人口増、高成長の時代だからこそ、その落ち込みをカバーできたのである。

 こんどの五輪・万博は違う。低成長・人口減少のなかでおこなわれるわけだから、特需景気の反動を吸収できる余地は少ない。落ち込んだあとのバウンドは期待できないのだ。

 過日、いまの景気拡大期がいざなぎ景気を超えて戦後2番目の長さになった、と発表された。2019年1月まで拡大が続く可能性が強いと見られており、そうなれば長さだけでは戦後最長となる。

 とはいえ、成長の光景はずいぶんと異なる。いざなぎ景気のころのように毎年10%近い成長をするような時代ではなく、1~2%成長もあれば、ありがたい時代だ。

 それでも日本の政治家や政策担当者、企業経営者たちには高度成長やバブル経済の「成功体験」がこびりついた人が多い。成長があらゆる問題を癒やしてくれてきた過去を見ているから、どうしても成長を求めたくなる。高い経済成長があれば、多くの企業が潤い、雇用が増える。労働者の給料も増えるから消費もますます高まるし、税収も増えて政府財政も拡大できる。

 だが、国家が豊かになり、先進国となって成熟すれば、成長率が低下傾向をたどるのは当然だ。まして日本は人口減少が始まっているのだから、1人当たり成長率を高めるのならともかく、全体の成長率をかつてのように年率2~3%以上に引き上げろ、というのは無理がある。

 無理にでも成長率を引き上げろというのなら、かなりのエネルギーを注ぎ続けなければならない。それには尋常でない規模のコストもかかる。それが今の日本にとって正しい道なのだろうか。

拡大東京五輪にむけて建設が進む新国立競技場=2018年7月18日

 ちなみに次の東京五輪・パラリンピックの大会経費はざっと1・35兆円(会計検査院が発表した関連経費をすべて含めると3兆円規模)、大阪万博は少なくとも2千億円以上と見込まれている。

 五輪も万博も開催都市の費用負担が大きくなりすぎ、「迷惑イベント」と化している。立候補都市が激減するなかで、どちらも2回目の開催となる日本は気前が良すぎないか。大阪万博の誘致を松井・大阪府知事が独走気味に始めた際、経済界のなかにもそういう慎重論が少なくなかったという。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


関連記事

筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

原真人の記事

もっと見る