日米貿易協定交渉は日本が圧倒的有利なはずだ
米国の対日通商要求は怖くない。交渉が長引くほど困るのは米国である
山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

G20サミットの会場で記念撮影に臨むトランプ米大統領(左)と安倍晋三首相=2018年11月30日、ブエノスアイレス
米国の対日要求明らかに
日米の貿易協定交渉でアメリカが要求する項目が明らかになった。
農産物と自動車
農産物についてはアメリカの市場アクセスが確保できるよう関税削減等を求めるとともに、自動車についてはアメリカ車が日本市場で売れない原因だと従来から主張してきた非関税障壁の是正のほか、日本の自動車業界の対米投資拡大などを念頭に、アメリカ国内での生産・雇用の拡大につながる措置の導入を求めるという。
為替条項と非市場国条項
さらに、自国産業の競争力を高めるため為替を自国通貨安(日本の場合は円安)に操作することを禁止する条項や「非市場国」(具体的には中国)とFTA(自由貿易協定)を結ぶことを抑制する条項を盛り込むよう、求めている。この二つは、いずれもNAFTA(北米自由貿易協定)を見直ししたUSMCAに、アメリカが盛り込むよう要求して実現したものである。
為替操作条項は、従来民主党の保護貿易の立場に立つ議員やアメリカの自動車業界等競争力の低下した業界が主張してきたものである。
また、非市場国条項を盛り込んだUSMCAでは、あるUSMCA加盟国が非市場国とFTAを結ぶと他の加盟国はUSMCAから脱退できるとしている。具体的には、カナダやメキシコが中国とFTAを締結すると、アメリカはUSMCAから抜けることで、カナダやメキシコがアメリカ市場に有利な条件でアクセスすることを禁止しようというのである。
アメリカ市場にアクセスできなくなるカナダやメキシコは中国とFTAを結ぼうとはしなくなる。一種の脅しである。
いずれも日本としては対応困難な無理筋の要求だ。政府の担当者はどのように考えているのだろうか。推測してみよう。