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赤字続出の官製ファンド、真犯人は財務省だ

理財局長として産業革新機構設立を強く後押ししたのは、後に大物次官となる勝氏だった

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

いつしか巨大な「経産省の財布」に

 経産省は2008年11月ごろからリーマン・ショックの国内経済への影響が甚大と認識し、望月晴文事務次官や石黒憲彦経済産業政策局担当審議官が各課の尻を叩いて緊急経済対策をまとめ、その過程で2000億円規模が見込まれた官製ベンチャーキャピタルの「イノベーション創造機構」は、9000億円規模の巨大官製ファンド構想に変質していった。

拡大経産省の事務次官当時の望月晴文氏=2008年8月19日

 当時、西山氏は「特定企業や産業を保護しようというものではない」と言いつつも、自らの腹案が大きく変貌していくことに驚き、「大型案件に対応することもあるかもしれない」と言及していた。

 そうした変質に対し、経産省の他の課長らからは「西山は前向きな、これから伸びていきそうなところを対象にしようとしていたのに、産業保護主義的なモノに切り替わってしまった」「どういう再編が正しいのか官の側で描くことはできないのに、投資先決定に関する官の裁量権が大きくなりかねない」といった批判の声があがっていた。

 結局、2009年に発足した産業革新機構(現INCJ。後身の産業革新投資機構の傘下にある)は、そんな誕生時の経緯が手伝って、ベンチャー投資と、産業保護主義的な大企業救済のための出資という二つの側面をあわせ持つようになった。

 後者の事例が、東芝、日立製作所、ソニーの中小型液晶部門を統合したジャパンディスプレイの設立であり、国産半導体企業救済のためのルネサスエレクトロニクスや東芝メモリへの出資である。台湾の鴻海精密工業に競り負けたがシャープの買収に意欲を燃やしたり、東芝と一緒になって仏アレバの送配電機器部門の買収を画策したりしたこともある。

 経産省のこうした産業政策に都合良く使われてきたことで、産業革新機構は「経産省の財布」と陰口をたたかれるようになった。

各省の官製ファンド乱立

 プールしておいた資金を自分たちの政策に沿った民間事業者に投じることができるという産業革新機構の仕組みは、他省庁にとっては垂涎の的だった。

 農水省が産業革新機構を真似て2013年にA―FIVEを設立したのを皮切りに、国土交通省(旧建設省系)が環境不動産普及促進機構、内閣府が民間資金等活用事業推進機構、経産省がクール・ジャパン機構、国交省(旧運輸省系)が海外交通・都市開発事業支援機構、総務省が海外通信・放送・郵便事業支援機構などと各省が一つずつ官製ファンドを設立していった。

 ちょうど成長戦略にこれといった政策がなかった安倍政権も、各省の「新ビジネスを育成したい」「日本企業の海外進出を手助けしたい」という売り込みを受け入れ、続々、設立されるようになり、いまやその数が16にもなった。

 問題は、資金の元締めである財務省だった。

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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