「イクメン」に続き、「ケアメン」を増やそう
「介護離職ゼロ」へ、女性偏重の負担を見直しオールジャパンで対応を
根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト
介護と育児の違い
介護と育児は、個人と社会で負担をシェアする、という点で共通している。だが両者の制度には大きな違いがある。
介護や育児を受け持つ主体は、家庭、政府、民間(市場)、ボランティアの4つがある。育児の場合、家庭から政府へのシフトが進んできた。保育施設の約8割は政府が補助する認可保育園であり、政府は待機児童ゼロを目標に掲げて、保育所の増設を進めている。
東京都を例にすると、2013年から2017年にかけて、認可保育所の定員は4割増えている。ただ、保育時間の延長など、利用者にとってサービスが向上すると、需要も増えることから、待機児童はなかなか減らない。それでも全体の申込者からみると待機児童は約1%であり、他国と比べても、公的支援は充実してきた、と評価できる。
一方介護については、公的な介護保険が導入されたが、負担の多くは家庭が担っている(下図)。
まず介護保険制度の下での、要介護、要支援の認定は受けていないが、自立した生活ができない人が存在する。その場合は、配偶者、子どもや近親者がサポートすることになる。また要介護者の認定を受けたとしても、昼間だけ施設で預かるなど、自宅での療養と家族の関与が前提となるケースが多い。
日本の社会通念としても、介護は家族で解決する問題、という考えが根強く、特に女性には男性以上にプレッシャーがかかる。筆者の周りでも、親が要介護者で、男女の兄弟がいる場合、女性のほうが、より重い役割を果たしていることが多い。実際に介護離職の8割以上は女性となっているが、女性活躍の推進にも支障となりかねない。
能力と実績を評価されて役員に登用されたものの、両親の介護のために、ポジションをあきらめた、という話を耳にすることがある。今後は、晩婚化、少子化が進む中で、さらに若い世代も介護と仕事の両立に苦労することになるだろう。