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神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら

気鋭のプロたちの著作権改革案、開幕の辞

福井健策 弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部・神戸大学大学院 客員教授

大胆提案の数々をダイジェストで

 さて、大盛り上がりだった本番での提案内容は、以下です(敬称略)。

・金子敏哉(明治大准教授)公表後30年が経過した著作物に100%の資産税を課し、著作権物納を認める
・平井佑希(ライツ法律特許事務所)事態を複雑化させる著作者人格権を大幅削減し、「名誉声望を害する」場合だけに制限
・橋本阿友子(骨董通り法律事務所)保護期間の計算をあまりに複雑化している旧著作権法からの卒業(2020年で適用終了)
・水口瑛介(湊総合法律事務所)DJプレイを可能にする制限規定を導入
・柿沼太一(STORIA法律事務所)著作権法版サンドボックス制度で、実験的な新制度導入を可能に
・生貝直人(東洋大准教授)保護期間の最後の20年は絶版作品のデジタルアーカイブ利用を可能に
・水野祐(シティライツ法律事務所)著作物と認定されるか否かで扱いが全く違う「オール・オア・ナッシング」の解消
・岡本健太郎(骨董通り法律事務所)故意による侵害以外は差止請求権を制限し、しかも過去の成果物の利用継続は可能に
・永井幸輔(LINE株式会社)過去作品をデジタル・リマスタリングした者に5年間の報酬請求権を与えて修復公開のインセンティブに

拡大知的財産法の第一人者である中山信弘・東大名誉教授
 もう冒頭からすごい。「中山教授最強最後の弟子」と筆者が勝手に呼んでいる金子敏哉は、留学中のハーヴァード大からスカイプ参加。公表から一定期間が経過した時点で著作権には100%の資産税(!)を課し、著作権自体での物納を認める。著作権は国が10年ごとに入札にかけて収入の80%は本人・遺族に分配。そして(大半であろう)入札者なしの作品はその期間は自由利用可にするという、権利死蔵問題の完全決着案です。しかも「これなら著作権法の改正はいりません」という、あなた企画意図読んでましたかの提案で、まずは会場の度肝を抜きました。

 次いで権利保護の闘士・平井佑希。「海賊版関連ではありません」で沸かせた後、ほぼイラストだけのスライドを映しながら、「人格権の縮減」をさらっと笑顔で提案しました。著作者人格権とは、著者の意に反する作品の改変は一切禁止できるなどの強い権利。著者の死後は、「故人の意に反するか否か」の曖昧さが利用の壁になります。これは実は国際条約(ベルヌ条約)より強い保護なので、ベルヌ水準に合わせて「著者の名誉や声望を害する利用のみを対象にすべし」と説きました。

 ピアニストでもある橋本阿友子の提案は、旧著作権法からの卒業。「死後70年」に延長された著作権の保護期間ですが、実はそこには更に保護を長期化・複雑化させる、いくつもの付加規定があります。そのひとつが「1970年以前の旧著作権法と現行法のいずれか長い方の保護期間を優先する」という規定(附則7条)。この目立たない条文のせいで、古い映画の保護がいつ終わったかの確定は至難なのです。「付加規定は負の遺産なので2020年で終了させて卒業しよう」と呼びかけました。


筆者

福井健策

福井健策(ふくい・けんさく) 弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部・神戸大学大学院 客員教授

1991年 東京大学法学部卒。1993年 弁護士登録(第二東京弁護士会)。米国コロンビア大学法学修士課程修了(セゾン文化財団スカラシップ)、シンガポール国立大学リサーチスカラーなど経て、現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。著書に「著作権の世紀」「誰が『知』を独占するのか」(集英社新書)、「エンタテインメントと著作権」全5巻(シリーズ編者、CRIC)、「『ネットの自由』vs.著作権」(光文社新書)、「18歳の著作権入門」(ちくまプリマ―新書)、「AIがつなげる社会」(弘文堂)ほか。 国会図書館審議会会長代理、「本の未来基金」運営委員、「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、think C世話人、デジタルアーカイブ学会理事、内閣知財本部など委員を務める。http://www.kottolaw.com Twitter: @fukuikensaku

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