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どうなる?ブレグジット

メイ英首相が嫌われる理由と今後のシナリオ

小林恭子 在英ジャーナリスト

「メイ・ボット」というあだ名がついて

 「いったんこうと決めたら、頑として方向性を変えない」。「自分の立場を明確にせず、いつのまにか動いたり、物事を決定したりしている」―。

 そんなメイ評がぴったり適合する事態となったのが、2017年5月の下院選だった。

 「選挙はしない」と直前まで言い続けたメイ首相。支持率が高く、下院でも保守党は過半数を維持していたが、さらにこれを拡大させようと画策した。選挙を行う決定は、メイ氏とごく少数の側近の間で行われていた。

 しかし、これは失敗に終わる。選挙では逆に議席数を減らしてしまい、重要な案件を確実に通すためには北アイルランドの地方政党「アイルランド統一党(DUP)」から閣外協力を得なければならない羽目になった。首相は北アイルランドへの巨額投資を約束し、「票を買った」のである。

 選挙戦の中で、メイ首相のある欠点が暴露された。メイ氏は人前でのパフォーマンスが政治家とは思えないほど苦手な人物だった。

 どういうことかというと、あらかじめ準備された演説はとうとうと披露することができるが、とっさにその場で考える受け答えが不得手で、特に有権者と「つながること」が苦手だった。ある意味では、まじめすぎるのだろう。一人の人間として驚いたり、熱くなったりした様子を人前では出さないことを心に決めたかのような人物である。

 これが如実になったのは、メディアの記者が厳しい質問をした時だ。メイ首相は事前に準備した回答を繰り返すだけ。いつしかメイ首相は「メイ・ボット(ロボットのようなメイ首相)」と呼ばれるようになった。

 また、ある記者がメイ首相から人間味あふれるコメントを取ろうと、「これまでの人生で、一番の悪さはなんでしたか」と聞いた。「未成年の時に、親に隠れてたばこを吸った」というような答えが出るだろうという期待があった。まじめな首相が何か、奇想天外のことを言って「彼女もやっぱり、同じ人間なんだよなあ」、と思わせてくれるだろうと。しかし、答えは「通り抜けてはいけない畑の中を、突っ切ったこと」。

 果たして、これが「これまでの人生で、一番の悪さ」なのだろうか?最後まで、メイ首相は素顔を見せないままに選挙戦を終えた。

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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