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ブレグジット協定案の否決後に起きること

合意なしEU離脱はデメリットばかりなのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

ハード・ボーダーによるダメージ

 他方で、関税同盟から脱退しEUから独立した関税地域となることは、イギリスはEU以外の国に対してのみならず、アイルランドなどのEU加盟国との貿易についても、厳格な国境管理(ハード・ボーダー)が要求されるということである(日本が他の国との貿易に対して税関を設けているのと同じである)。

 メイ首相とEUとのブレグジット協定案が、事実上イギリスをEUの関税同盟と単一市場に止めるというブレグジットとは言えないものになってしまったのは、アイルランドと北アイルランドとの間にハード・ボーダーを設定したくなかったからである。ここを、イギリスをEUに繋ぎ止めたい欧州委員会の百戦錬磨の交渉者に上手く付け込まれたのだろう。

 私のような部外者からすれば、ハード・ボーダー回避という尻尾がブレグジットという胴体を振り回してしまったようなブレグジット協定案に見えるが、北アイルランド紛争を経験した人たちからすれば、ハード・ボーダー回避は至上命題だったのだろう。

 しかし、ハード・ブレグジットになると、ハード・ボーダーは回避できない。再度のアイルランド紛争勃発という政治的なコストを覚悟していく必要があるだろう。

 次は、経済的なコストだ。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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