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著作権保護期間「最終20年条項」+α

神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら(1)

生貝直人 東洋大学准教授

非常に控えめな提案:保護期間最終20年条項

 米国は日本よりもちょうど20年早い1998年に保護期間を延長し、死後70年という異常に長い期間を世界的潮流としてきた震源地です。

 今回のTPP11発効に伴う保護期間延長も、元々は米国の強い要請を受けてTPPの中に盛り込まれたものでした(ご存知の通り、その後米国自身がTPP自体から離脱してしまったわけですが)。20年前のソニー・ボノ米国保護期間延長法に対しては、クリエイティブ・コモンズの創設者としても著名なローレンス・レッシグ教授をはじめとする法学者らが中心となり、違憲訴訟を含む大規模な反対運動を行ったことを覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。

 実はこの1998年の保護期間延長法の中で、日本ではほとんど知られていませんが、米国著作権法には「108条(h)項」という条文が設けられ、保護期間最終20年に入った著作物は、絶版等の要件を満たす限り、図書館等のアーカイブ機関がオンライン公開を行うことができるとされました

 米国著作権法108条とは、図書館等に関わる権利制限を定めた条文で、(a)項から(g)項には日本の著作権法31条にあるような利用者のためのコピーなどが規定されていますが、問題の(h)項の条文は以下の通りです。

米国著作権法108条(h)項(山本隆司訳、公益社団法人著作権情報センター
(1) 本条において、発行著作物に対する著作権の保護期間の最後の20年間に、図書館または文書資料館(図書館または文書資料館として機能する非営利的教育機関を含む)が、相当な調査に基づいて第(2)節(A)(B)および(C)に定める条件に該当しないと第一次的に判断した場合には、保存、学問または研究のために、かかる著作物またはその一部のコピーまたはレコードをファクシミリまたはデジタル形式にて複製、頒布、展示または実演することができる。
(2) 以下のいずれかの場合、複製、頒布、展示または実演は本条において認められない。
(A) 著作物が通常の商業的利用の対象である場合。
(B) 著作物のコピーまたはレコードが相当な金額で入手できる場合。
(C) 著作権者またはその代理人が、著作権局長が定める規則に従って、第(A)号または第(B)号に定める条件が適用される旨の通知を行う場合。
(3) 本項に定める免除は、図書館または文書資料館以外の利用者による、以後の使用には適用されない。

 最近ではこの条項を使って、ウェブサイトのアーカイブで有名なインターネット・アーカイブという非営利団体が、保護期間最終20年に入った書籍等を対象とした、「ソニー・ボノ・メモリアル・コレクション」という、保護期間延長法(起案者)の名前を冠した、少し皮肉の効いた名称の素晴らしいデジタルアーカイブを公開しています。

拡大インターネット・アーカイブのウェブサイト『ソニー・ボノ・メモリアル・コレクション』

 保護期間延長の震源地である米国においても、その副作用を少しでも軽減するために、20年前の延長と同時に、このような条項を設けていたのです。

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筆者

生貝直人

生貝直人(いけがい・なおと) 東洋大学准教授

1982年生まれ。2005年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2012年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。東京大学大学院情報学環客員准教授、東京芸術大学特別研究員等を兼務。国立情報学研究所特任研究員、東京大学附属図書館・大学院情報学環特任講師、情報通信総合研究所研究員等を経て2018年4月より現職。著書に『情報社会と共同規制』等。専門分野は情報政策の国際比較。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです