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「老後は持ち家」は今や昔。年金より住宅を!

年金の半分が住居費に消えていく。持ち家前提の住宅政策の転換なしに老後の安心はない

山口智久 朝日新聞オピニオン編集長代理

「家族観」も要因

 家族観の問題もあるのではないか。

 自民党が2012年に公表した憲法改正草案の第24条には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という「基本原則」が盛り込まれた。この考え方でいけば、持ち家がない高齢者は、子どもや親類を頼るのが当然だろう、ということになる。

 2016年度の税制改正では、3世代が同居するために住宅をリフォームする場合は減税対象にした。しかし、現実は3世代同居が減り、単身または夫婦のみの高齢者が増え続けている。生活保護に頼らざるを得ない高齢者も増えている。

 祐成保志・東大准教授が指摘するように、年金や介護保険は、家族が私的に提供していた仕送りや介護を社会制度化したものだ。諸外国がすでにやっているように、住宅の社会化も可能である。「家族は支え合うべきだ」という理想を抱くのは結構だが、現実に対応するのも政治であろう。

 政治やメディアの縦割り構造にも問題がある。

 国会で高齢者の福祉政策を主に議論するのは厚生労働委員会で、住宅政策は国土交通委員会である。メディアも省庁別に取材するので、ほかの省にかかわる問題はなかなか取材しない。国会に、厚労委員会と国交委員会の常設の連合審査会を設けてはどうか。

 実は、官僚機構がすでに連携を進めている。厚労省老健局と国交省の住宅局や都市局が、以前から人事交流をしている。2016年には厚労省と国交省による「福祉・住宅行政の連携強化のための連絡協議会」が設けられた。

「100年安心」の足かせ

 年金について、政府はもっと正直に呼びかけた方がいい。「老後の生活は、年金だけでは頼りないですよ。持ち家を買って、貯金するなり、家族で支え合うなりして、まずは自助努力をしてくださいね」と。その上で、セーフティーネットを設けて、「さまざまな事情で老後の備えが十分にできなかった方々にも、最低限の生活は保証します」というのが責任ある政府の姿であろう。

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 ところが、こうはっきりと言えない事情が政府にはある。2004年の年金改革で「100年安心」と謳ってしまったからだ。

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筆者

山口智久

山口智久(やまぐち・ともひさ) 朝日新聞オピニオン編集長代理

1970年生まれ。1994年、朝日新聞社入社。科学部、経済部、文化くらし報道部で、主に環境、技術開発、社会保障を取材。2011年以降は文化くらし報道部、経済部、特別報道部、科学医療部でデスクを務めた。2016年5月から2018年10月まで人事部採用担当部長。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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