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著作権の保護期間 旧法からの軽やかな卒業

神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら(2)

橋本阿友子 弁護士(骨董通り法律事務所)

旧法下の産物はほかにも

 旧法が計算方法を複雑化させる要素はまだまだあります。

 写真の著作物は今ではほかの著作物と同じですが、旧法下では公表後10年(後に13年)しか保護を与えられていませんでした。独創性が希薄であるというのが理由です。ベルヌ条約でも最低25年保護すればよいと定められています(7条4号)。

 なんだか盛り上がって来たので、もっとややこしい話をしましょう。

 著作権のうち翻訳権について、旧法下では、原作が発行された翌年1月1日から10年以内に日本で翻訳出版されなければ、以後は誰でも日本で翻訳出版できるということになっていました(10年留保。旧法7条)。そればかりか、この10年留保が適用される場合の戦時加算は通常の戦時期間に更に6ヶ月加算されます(戦時加算特例法5条)。

 また、翻訳権の保護は翻訳が元来的に条約との関わりが深いために、国によっても異なる考慮が求められます。例えば、アメリカとの関係では、1941年までは相互に翻訳自由であり、10年留保の適用がありませんでした。

 どうでしょうか。楽しいですか、こんな話。

 極めつきは映画の著作物です。映画の著作物(広く動画作品)は、そもそも著作者は誰かという点から問題となりました。これは旧法が基本的に保護期間の終期を著作者の死後38年と定めていたことによります。現行法では映画の著作物は公表後起算(50年)に変更され、この点はクリアになりました。更に、2003年に著作権法が改正され、映画の著作物に限ってはこのとき既に保護期間が公表後50年から70年に延長されています。

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 このように、旧法の適用があるだけで、古い著作物の保護期間の計算が更に複雑化するのです。

 こんな話を喜ぶのは著作権マニアだけですが、現実の現場ではこの複雑方程式を解かないと、作品を使って良いのか、どこにいるともわからない権利者を見つけ出さないと使えないのかの区別もつかないのです。

 特に元凶と言えるのは、「旧法と現行法を比較して旧法の保護期間の方が長い場合には旧法による」ことを定めた、下記の原始附則(昭和45年法律第48号附則)7条という規定です。

原始附則(昭和45年法律第48号附則)7条
(著作物の保護期間についての経過措置)
第七条 この法律の施行前に公表された著作物の著作権の存続期間については、当該著作物の旧法による著作権の存続期間が新法第二章第四節の規定による期間より長いときは、なお従前の例による。

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筆者

橋本阿友子

橋本阿友子(はしもと・あゆこ) 弁護士(骨董通り法律事務所)

弁護士(骨董通り法律事務所)。兵庫県生まれ。京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。神戸大学非常勤講師。専門は音楽著作権など。主な著作に「著作者人格権の処分についての序論的検討」(金沢法学59巻1号)、「USER RIGHTS DATABASE - MEASURING THE IMPACT OF COPYRIGHT BALANCE」(Japanのみ担当、上野達弘教授との共著、infojustice.orgウェブサイト)、「ヤマハがJASRACを提訴 - 音楽教室での演奏は聞かせる目的?教育目的?」(BUSINESS LAWYERSウェブサイト)がある。ピアニストとしても活動しており、コンクール受賞歴のほか、ニューヨークのカーネギーホールでの演奏経験を持つ。