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DJプレイを適法にする著作権の権利制限規定

神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら(3)

水口瑛介 弁護士

DJプレイの著作権法上の問題点とは

①演奏権との関係

 観客の前でDJが楽曲を再生する行為は、各楽曲の著作権者の演奏権との関係が問題となります。

 この点、DJがプレイする会場が、JASRAC等の著作権管理団体に対して楽曲の著作権の利用料を支払っている場合には問題ないとも思えます。

 しかし、DJは、一般的な知名度の高くないアーティストの楽曲や、レコードでしかリリースされていない楽曲などを使用することがあり、このような楽曲については、著作権管理団体に信託されていないことが多くあります。

 私は趣味でDJをしていますが、とあるイベントに出演した際に再生した楽曲(1時間のDJで17曲を再生しました)のうち著作権管理団体に信託されていることが判明したのは、7曲だけでした。判明したと言ったのは、確認することができたのがこれだけだったからです。

 JASRACは海外の著作権管理団体と相互管理契約を締結しているため、日本国内における外国曲の利用についても、JASRACでの手続きで足ります。

 しかし、外国曲についてはJASRACのデータベースであるJ-WIDにその全てが搭載されているわけではありません。そのため、J-WIDを検索するだけでは足りず、GEMA(ドイツ)、ASCAP(アメリカ)などの各国の著作権管理団体のデータベースで検索をする必要があり、その結果、見つかったのがこれだけだったのです(見つけることが出来なかったものの実際には信託されている楽曲があるかもしれませんが、外国曲の著作権管理がどの国のどの団体で行われているかを確認することはそれだけ大変です)。

 著作権管理団体に信託されていない楽曲については、著作権者から直接利用許諾を受けなければなりません。

 しかし、DJは、多くの場合、実際に再生する楽曲やその順番をあらかじめ決めておくのではなく、ある程度の曲数まで頭の中で絞っておいて(実際に使用するよりも多くのレコードをクラブに持ち込んでおいて)、実際に使用する楽曲をその場で選択しますから、事前に各楽曲の著作権者の許諾を得ておくということは現実的ではありません。

 また、事前に許諾を得ようと試みた場合であっても、著作権者が見つからない、著作権者が複数いる、著作権者が許諾に応じてくれないなど、様々な問題に直面することがあり、許諾を得ておくことは簡単ではありません。

②編曲権及び同一性保持権との関係

 DJプレイにおいて、楽曲と楽曲を続けて再生していく際には、各楽曲の速度、音程、音量などを調整した上で、複数の楽曲を重ね合わせることが行われます。

 この行為を二次創作と評価できるか否か(原楽曲に新たな創作性を加えているか)についてはどちらの解釈もあり得ますが、仮に二次創作と評価する場合には、楽曲の編曲権との関係で問題となります。

 また、これは同時に、著作者の有する楽曲の同一性保持権との関係でも問題となるでしょう。

 編曲権及び同一性保持権については、著作権管理団体で管理されていないため、それぞれの楽曲の著作者や音楽出版社等から個々に許諾を得る必要があります。

 しかし、個々に事前に許諾を得ておくことが現実的ではないことは、演奏権と同様です。

③複製権との関係

 DJ機材の進歩により、複製権侵害の問題も生じるようになりました。

 かつて、DJは、レコードをターンテーブルを用いて再生していました。しかし、CDJと呼ばれるCD版ターンテーブルが登場すると、楽曲の音源データをCD-Rにコピーしてこれをクラブに持ち込み、DJプレイを行うことが可能になりました。

 また、その後、USBメモリに楽曲のデータを記録して使用することや、DJソフトウェアをインストールしたパソコンを用いてDJを行うということが可能になりました。

 楽曲のデータを用いた新しいスタイルのDJプレイは、楽曲の電磁的コピーを伴うため、著作権者の有する複製権との関係で問題があります。

④公衆送信権または送信可能化権との関係

 DJプレイを録音または録画し、SoundCloudやYouTubeといったサービスにアップロードしてアーカイブ化したり、生配信したりするということもよく行われています。

 これは楽曲の著作権者の有する公衆送信権または送信可能化権との関係で問題となると同時に、レコード制作者(原盤権者)や実演家の著作隣接権との関係でも問題となります。特に著作隣接権については、楽曲のように管理団体で一括して許諾を受けるということも困難です。

 なお、私見ですが、特にテクノやハウスといった一部のジャンルの楽曲では、楽曲同士をつなぎ合わせ易いようにイントロとアウトロが長くなっているなど、DJプレイにおいて使用されることが想定された構成になっている場合があります。このような楽曲について、著作権管理団体に信託されていない場合には、DJプレイにおいて使用されることについて、著作権者の黙示の包括的な承諾があるとも評価できるのではないでしょうか。

 もっとも、これは特定のジャンルのさらに一部の楽曲に限った話であり、問題は残ります。

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筆者

水口瑛介

水口瑛介(みずぐち・えいすけ) 弁護士

1982年、東京都国立市生まれ。東京大学法学部卒業。 音楽家のための法律相談サービスLaw and Theory(http://law-and-theory.com/)代表。 日本キックボクシング選手協会理事。