メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

高すぎる「義務教育の保護者負担」

高等・幼児教育の無償化どころか、憲法が掲げる義務教育の「無償性」も実現していない

髙橋 哲 埼玉大学准教授

憲法は義務教育を「無償」と定めるが…

 周知のように、日本国憲法26条は、「教育を受ける権利」を定め、教育を人間に欠くことのできない人権として位置づけている。

憲法第二十六条
1項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

 「教育を受ける権利」は、公定英訳では“right to receive an equal education”とされており、直訳すれば「平等な教育を受ける権利」を意味している。すなわち、憲法26条1項は、平等に教育を受けることを権利として定め、2項はこれを保障するための方途として「義務教育の無償」を宣言しているのである。

 「義務教育の無償」は、字句通りに読めば、就学に必要な一切の費用を無償にしているようにみえる。しかしながら、実際には、日本国憲法施行以来、保護者による多額の私費負担に依存した義務教育制度が形成されてきたのである。

 2009年に発行された『子どもの貧困白書』は、無償であるはずの義務教育において、保護者による多大な私費負担が求められていることを、学校事務職員の調査により明らかにしたものである(子どもの貧困白書編集委員会編『子どもの貧困白書』明石書店、2009年、156-159頁)。某県公立中学校では、体操着、制服、給食費、修学旅行積立金、教材費などを含めて、入学年度に約25万6千円の私費負担が必要であることが示されている。

拡大Remizov/Shutterstock.com

 全国的な傾向をみても、文部科学省の実施する『子供の学習費調査』よれば、学校への保護者負担を示す学校教育費と給食費の合計は、最新版2016年度の調査において公立中学校で17万7370円、公立小学校で10万4484円にのぼっており、高額な私費負担の存在が示されている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

髙橋 哲

髙橋 哲(たかはし・さとし) 埼玉大学准教授

専門は教育法学、教育行政学。2016-2017年にフルブライト奨学生としてコロンビア大学にて在外研究。著書に『現代米国の教員団体と教育労働法制改革―公立学校教員の労働基本権と専門職性をめぐる相克―』(風間書房、2011年、単著)、『公教育の無償性を実現する―教育財政法の再構築―』(大月書店、2012年、共著)など。