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周回遅れだった日産のガバナンス

日産は開示基準が低い日本でも取り残されていた。起こるべくして起きたゴーン事件。

加藤裕則 朝日新聞経済部記者

ゴーン氏は0円だった「株価連動型インセンティブ受領権」

 では、どんなところが不十分だったのか。

 日産は2018年12月25日、新たなコーポレート・ガバナンス報告書を東証に提出した。この報告書は、社外取締役の人数や割合、株の持ち合いの状況など経営陣を律する仕組みを会社自ら説明するもので、同年7月に出した新たな報告書と様変わりしていた。

 「当社前代表取締役会長らによる重大な不正行為を受け」との説明を随所に盛り込み、今後、特別委員会を設けて改善策を検討することを繰り返していた。そのうえで、役員報酬について「経営陣の報酬額決定を会長に一任していたものであるが、これを撤回した」と明記した。

 ゴーン前会長は計43億円の報酬を有価証券報告書(有報)に記載しなかった疑いで逮捕・起訴されたが、役員個々の報酬額の決定権まで握っていたことを改めて公式に認めた。

 報酬に関しては、有価証券報告書の中に誰が見ても首をかしげるような記載があった。2010年春から1億円以上の報酬を受け取った役員名やその金額、簡単な内訳を有価証券報告書に記載しなければいけないようになっており、日産でもゴーン前会長の分が掲載され、例年、10億円近くの報酬が記載されている。

 ただ、内訳にある「株価連動型インセンティブ受領権」の欄を見ると、西川氏ら他の役員が数千万円を受け取っているのに、ゴーン前会長は「0円」「―」などと毎年、受け取っていないような記述だ。

拡大株主総会に出席した日産自動車のカルロス・ゴーン会長(右)と西川広人社長

 これに疑問を持った人がいた。株主総会の議決権行使について、機関投資家にアドバイス業務をしている男性は数年前、「外国人の高額報酬はだいたいが株価など業績連動型が理由のはずなのに」と疑問に思い、日産に電話で問い合わせたという。だが、明確な回答は得られず、今も違和感を覚えたままだ。

 役員報酬は、その総額を株主総会で定めるよう会社法で義務づけられているが、役員間でどう配分するかは各企業で決める。詳細な決め方まで有価証券報告書や総会の書類で開示することは義務づけられておらず、各企業の自主性に任せられている。そのため、株主の監視の目が届きにくいと、海外の機関投資家などから日本の開示基準の低さが問題視されていた。

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筆者

加藤裕則

加藤裕則(かとう・ひろのり) 朝日新聞経済部記者

1965年10月、秋田県生まれ。岩手大人文社会科学部卒業。1989年4月に朝日新聞社入社。静岡支局や浦和支局(現さいたま総局)などに赴任した後、1999年東京本社経済部員。その後、名古屋や大阪でも経済記者を務めた。経済部では通産省(現・経産省)、鉄鋼業界、トヨタ自動車(名古屋)、関西空港・神戸港などを取材した。コーポレート・ガバナンスや会計監査について自主的に取材を重ねてきた。2014年9月から石巻支局員として東日本大震災からの復興の過程を取材。2018年4月から東京本社の経済部員として経団連などを担当している。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです