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著作権を金継ぎする/デジタル・リマスタリング権

神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら(4)

永井幸輔 弁護士

デジタル・リマスタリング権の試案

 さて、保護期間が20年延長されたことによって、パブリック・ドメインとして自由に利用できる作品は20年分減ることになりました。(この20年間で散逸する作品もあるでしょうから、陽の目を見なくなってしまう作品はそれ以上に増えると思われます)

 そのため、今後は今まで以上に利用可能な著作物を増やし、著作物の流動性を高めることが文化芸術の発展には重要になるでしょう。

 その方法は、例えばクリエイティブ・コモンズ・ライセンス等のパブリックライセンスによる作品の利用許諾であり、またはオーファン(権利者不明)作品対策です。間もなく試験運用が始まる「ジャパンサーチ」のような、作品への導線となるポータルの設置も挙げられます。

 そして、これらに加えてもう一つ、今回新しいアイデアとして提案するのが「デジタル・リマスタリング権」です。

拡大Vladimir Kovalchuk/shutterstock.com

 私達は、パブリック・ドメインになった作品を自由に利用することができます。しかし、そもそもそのような作品へのアクセスは十分に整っているでしょうか。

 特に、70年以上前にはCDやDVDのようなデジタル・メディアは存在していないので、紙のようなアナログの媒体で残存している必要がありますし、残存していたとしてもそれを商業利用するためにはコストをかけて媒体の再制作――リマスタリングする必要があるでしょう。

 さて、パブリック・ドメインの作品にコストをかけてリマスタリングして、発売当時と同じかそれ以上の美しい状態で販売できるようになったとしましょう。

 しかしその作品は既に著作権が切れているため、例えば購入者はスキャンして自由にインターネットで配布することができます。また、紙に印刷して販売することもできます……そうすると、製作者は利益どころか、リマスタリングの費用すら回収できないこともありそうです。そして、そのような状況では、パブリック・ドメインの作品をリマスタリングして販売しようという製作者が現れなくなってしまうかも知れません。

 そこで、新たに「デジタル・リマスタリング権」を創設してはどうでしょう。この権利は、簡単に言えば、デジタル・リマスタリングを行った製作者は、限られた一定期間、そのリマスタリングした製作物の利用者に対して報酬を請求することができるものです。収益が法的に保護されるので、製作者は安心して作品をリマスタリングして販売できることになります。


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筆者

永井幸輔

永井幸輔(ながい・こうすけ) 弁護士

弁護士/特定非営利活動法人コモンスフィア(Creative Commons Japan)理事/Arts and Law。インターネット企業にインハウス弁護士として勤務しつつ、美術・演劇・ファッション・出版・映画・音楽などの文化芸術とインターネットやテックの交錯する領域を中心に法務アドバイスを提供。執筆・編集に『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社)、「著作権をめぐる表現と権利の物語」(MdN2018年2月号)、「自分ごとの著作権。」(MdN2016年1月号)、「デザイナーのための著作権と法律講座」(MdN、共同担当)、「法は創造性をつぶすのか」(広告2013年5月号)等。