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著作権を金継ぎする/デジタル・リマスタリング権

神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら(4)

永井幸輔 弁護士

“金継ぎ”して作る著作権

 本連載のきっかけとなった勉強会「骨董通りリンク」のライトニングトーク企画では、新しい権利の追加を提案した発表者は、私以外にはいませんでした。

 それもそうかも知れません。著作権はときに「継ぎはぎ」の法律だと言われます。

 著作権法が生まれるきっかけとなったグーテンベルグの活版印刷を始めとして、映画、テレビ、インターネットと新たなメディアや技術が開発される度に「継ぎ足されてきた」著作権法は、ある種の部分最適が繰り返されてきた結果、コンセプトや全体像が見えず、法律家でもその読解が容易ではない条文が量産され、キメラのような法律になってしまいました。

 新たな権利を追加することは、それだけでも著作権の「利便性」を悪化させるであろうことは、否定できません。

 他方で、法律が改正される=常に変化する社会的状況に応じて柔軟にルールを変化させることそれ自体は、決して誤りではないと思います。権利の新設であったとしても、社会にベストフィットする内容・サイズであれば、著作物の流通を阻害せず促進し得るのではないでしょうか。

 そうだとすると、それは一体どのような権利の形なのでしょうか。

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 今回のデジタル・リマスタリング権について考える中で、「金継ぎ」のイメージに辿り着きました。金継ぎは修復技法の一つで、食器などの器が欠けたり割れたりしたときに、漆を使って破損部分を接着し、継ぎ目を金などで装飾して仕上げる手法です。

 私自身この金継ぎが好きで、割れてしまったお気に入りの器を金継ぎして未だに使っていたりします。(最近は、金継ぎの教室やワークショップなども開催されていて、気軽に経験できるので、ご興味のある方は是非!)

 この金継ぎは、これからの著作権を考える上で一つのヒントになるかも知れません。今回「金継ぎ」という言葉にインスピレーションを覚えたのは、2つの意味があります。

 一つは、過去の作品にデジタル・リマスタリングを行って新たな魅力を引き出し、現代に繋ぐことが実に金継ぎ的であり、著作物の流通促進のための重要な手法の一つなのではないかということ。もう一つは、技術の進歩によって社会的な状況が変化する中で、「継ぎはぎ」が著作権法の宿命であったとしても、より多くの人々に理解され、社会をドライブさせるためには、より良い法律の「継ぎ方」があるのではないか、それをもっと考えてもいいのではないかということ。

 今回の謙抑的な権利の新設は、その一つの実験でもあります。

 文化を発展させるための著作権法がどのようにあるべきか、著作権保護期間が延長された今、改めて考える機会を与えられているように感じています。

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筆者

永井幸輔

永井幸輔(ながい・こうすけ) 弁護士

弁護士/特定非営利活動法人コモンスフィア(Creative Commons Japan)理事/Arts and Law。インターネット企業にインハウス弁護士として勤務しつつ、美術・演劇・ファッション・出版・映画・音楽などの文化芸術とインターネットやテックの交錯する領域を中心に法務アドバイスを提供。執筆・編集に『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社)、「著作権をめぐる表現と権利の物語」(MdN2018年2月号)、「自分ごとの著作権。」(MdN2016年1月号)、「デザイナーのための著作権と法律講座」(MdN、共同担当)、「法は創造性をつぶすのか」(広告2013年5月号)等。