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「縮小・成熟」社会へのパラダイム転換

ココロの時代の価値観を育てることが求められている

土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

年間45万人の人口減少時代

 日本の2018年の出生数は92万人、死亡数は137万人、年間に約45万人の人口自然減が起きている。日本社会は戦後の人口増加を背景とする高度経済成長時代から、少子高齢化というドラスティックな人口構造の変化のなかで、「縮小・成熟」社会を迎えているのだ。

 世界で最も高齢化が進むわが国は課題先進国とも言われる。どのような社会経済政策を考える上でも人口動向は重要な要素であることは確かだ。日本が直面するさまざまな社会的課題に対処するためには、人口や世帯の構造変化に適切に対応することが重要だ。

 今日の社会制度はあちこちに軋みが生じ、将来的には機能不全に陥る恐れもあるだろう。その立て直しのためには、われわれの意識改革を含め、「拡大・膨張」から「縮小・成熟」へと新たな時代のパラダイムへ転換を図ることが必要だ。

「縮小・成熟」時代の都市インフラ

拡大日本橋川に架かる日本橋。上は首都高の高架橋が覆っている=東京都中央区
 2020年東京オリンピックの開催まで1年半を切った。1964年の東京大会と比較すると、社会状況の変化がよくわかる。前回大会の時、日本は高度経済成長の真っ只中にあり、交通インフラである東海道新幹線の開業や首都高速道路の開通に沸いていた。

 1年半後に迫った東京大会に向けては、道路や鉄道をはじめとする多くの都市インフラ機能をどう利活用するかが課題だ。オリンピック以降になるが、都市景観上も大きな問題だった東京・日本橋の上に架かる首都高速道路の地下化計画も進んでいる。

 経済成長最優先の時代から成熟した暮らしを実現する生活大国を目指す今日では、都市インフラの在り方も大きく変わっている。アメリカ・ボストン市では市街地を分断していた高速道路を地下に埋設し、上部を公園や商業施設として活用する再開発を行った。韓国・ソウル市では都心の高速道路を撤去し、水辺の都市景観を修復することで都市の賑わいを取り戻している。

減少かつ縮小する世帯と住宅

 日本ではすでに人口減少が進んでいるが、平均世帯人員が減っているために世帯数は増えている。それにもかかわらず空き家の数が増え続けているのは、世帯規模の縮小による新たな需要に対して既存の住宅ストックとの間にミスマッチが起こり、住宅不足と余剰が同時に生じているからだろう。

 ひとり暮らしや夫婦のみ世帯が半数を超える現在、小規模世帯向けの住宅が必要だ。子どもが増える時代には住宅の「増築」需要は大きかったが、逆に家族が縮小する時代には「減築」が求められているのだ。

 1960年代以降、大都市近郊では大規模ニュータウン開発が行われたが、現在では高齢化とともに空き家が目立っている。ニュータウンの集合住宅も高齢者の住み替えなどにより戸数を減らす「減築」が必要だ。今後は人口だけでなく世帯数自体も減少しはじめ、世帯の小規模化と相まって「減築」需要が高まるだろう。

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筆者

土堤内昭雄

土堤内昭雄(どてうち・あきお) 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

1977年京都大学工学部建築系学科卒業、1985年マサチューセッツ工科大学大学院高等工学研究プログラム修了。1988年ニッセイ基礎研究所入社。2013年東京工業大学大学院博士後期課程(社会工学専攻)満期退学。 「少子高齢化・人口減少とまちづくり」、「コミュニティ・NPOと市民社会」、「男女共同参画とライフデザイン」等に関する調査・研究および講演・執筆を行う。厚生労働省社会保障審議会児童部会委員(2008年~2014年)、順天堂大学国際教養学部非常勤講師(2015年度~)等を務める。著書に『父親が子育てに出会う時』(筒井書房)、『「人口減少」で読み解く時代』(ぎょうせい)など。

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