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林業界の人手不足と外国人労働者問題

新規就業者の定着のためには、雇用と生活環境の改善が必要だ

田中淳夫 森林ジャーナリスト

林業就業者の高齢化率は低下傾向

 全国の林業従事者数は4万5000人程度だが、最近では年間3000人以上が新規就業している。その多くが緑の雇用研修を経ている。2010年の林業センサスによると、林業経営体に雇用されている労働者の約3分の1が緑の雇用出身者という。そして35歳未満の割合を示す若年者率が17.6%まで上昇し、農業(7.2%)や漁業(12.6%)を大きく上回る。まだ平均年齢は51歳と高いが、65歳以上の高齢化率は徐々に低下しており、第一次産業の中では若返りが進んでいる職種となった。これは大きな成果と言えるだろう。いわば、林業は人手不足対策の先進業界なのだ。

 これらの取り組みを見ると、誰もが3K仕事を嫌がり都会をめざすわけではないことに気づく。高齢化による引退者の増加も、従来の職場に空きができ新規参入がしやすくなるとポジティブに見ることもできる。

 一方、田舎社会から見ると、これまでよそ者という目で見てきた都会出身者が自分たちの村に居住する中で生活の価値観の見直しも進んだ。林業で働くためには山村に移り住まねばならないし、家族を帯同することも多い。必然的に山里の人口を増やす結果となった。その結果として小学校の生徒数が久々に増えた。また古い慣習の見直しもあれば、途絶えていた祭りを移住者のおかげで復活させられた事例もある。もちろんお互いの意見の齟齬から戸惑いや軋轢を生み出す例も少なくないが、全体としては徐々に溶け込んできたと言えるだろう。

高まる外国人労働者受け入れを求める声

 このように見ていくと、林業界の新規就業者募集は成功したかに思える。だが、現実の林業界は人手不足を解決していない。林業従事者は年々減っており(1990年代の従事者数は10万人程度いた)、注文に応じた量の木材を出せなくなった、いや事業継続も難しくなったという声も強まっている。このままだと産業として行き詰まり、さらに山村自体が崩壊するのが目に見えている。だから林業界でも外国人労働者を受け入れようという声は高まっている。

 毎年何千人も新規就業者がいるのに、なぜ従事者数は増えないのか。引退する高齢者が多いことも理由の一つだろうが、それだけでは説明がつかない。そこで気になるのが定着率である。

 緑の雇用研修生の1年目の定着率は7割を超すそうだ。これは全産業の数字と比べても悪くない。この調子で続けば ・・・ログインして読む
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筆者

田中淳夫

田中淳夫(たなか・あつお) 森林ジャーナリスト

1959年大阪生まれ。静岡大学農学部卒。日本唯一の森林ジャーナリストとして森林と人間の関わりをテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『森林異変』『森と日本人の1500年』(ともに平凡社新書)のほか、『日本人が知っておきたい森林の新常識』(洋泉社)、『樹木葬という選択』(築地書館)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。

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