山口智久(やまぐち・ともひさ) 朝日新聞オピニオン編集長代理
1970年生まれ。1994年、朝日新聞社入社。科学部、経済部、文化くらし報道部で、主に環境、技術開発、社会保障を取材。2011年以降は文化くらし報道部、経済部、特別報道部、科学医療部でデスクを務めた。2016年5月から2018年10月まで人事部採用担当部長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
我慢して節電するよりも「クリーンなエネルギーがほしい」と訴えよう
ところで、冷房の設定温度を抑えることが、どれくらいの温暖化対策になるのか。
職場ではなく家庭での話だが、「エネルギー白書」によれば、各家庭が使うエネルギーのうち、冷房に使われるのは2.3%に過ぎない。
ついでに最近の不正統計問題にあやかって、エネルギー白書の統計でいつも疑問に思っていることを指摘しておきたい。
エネルギー消費の推移を示すグラフで、いつも第一次オイルショックが起きた1973年度と比べている。
全体では1.2倍増えたが、産業部門は減らしたのに対し、家庭部門や運輸部門は増えているという見せ方をしている。これを見ると、産業界は省エネの努力をしてきたのに、家庭では節約せずに便利な家電製品を増やして豊かさを享受しているのではないか、と罪悪感にかられる。
あるいは、産業界を指導してきた経済産業省(旧通商産業省)の成果を強調し、国民啓発担当(環境省)、運輸部門担当(国土交通省)の対策が遅れていることをアピールしているようだ。
ところが、エネルギー消費量が前年度に比べてどう変化したかを計算すると、以下のようになる。
確かに、1970年代は産業部門が他部門に比べて大きく減らしている。ところが2000年以降は、各部門に差はあまり見られない。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?