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「がん光免疫療法」の登場が意味するもの

低コストで低侵襲、最終目標はがんに対するワクチン効果

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

外科手術、放射線療法、化学療法に次ぐ第4の治療法

 現在、他の方法で効果がなかった世界10カ国の頭頚部がん患者275人を対象に臨床試験が行われている。うち米国では患者15人中の14人でがんが3割以上縮小し、そのうち7人は画像上で消滅するという好成績だった(注参照)。

(注) 頭頚部がんの臨床試験を実施しているのは、米国のベンチャー企業・楽天アスピリン社(CEOは三木谷浩史・楽天会長兼社長)である。この会社はNIHから独占的にライセンスを供与されており、三木谷氏が提供した投資資金などを基に運営されている。

拡大米国立がん研究所主任研究員・小林久隆医師
 小林医師は、京都大学医学部を卒業後、放射線によるがん治療を行っていたが、患者の治療箇所がケロイド状になることに悩み、NCIに移って患者の負担が少ない治療法の開発に取り組んだ。約20年かけてたどり着いたのが光免疫療法だった。

 その研究成果は、2012年2月、当時のオバマ大統領が一般教書演説の中で「米政府の研究機関が成し遂げた輝かしい業績」として紹介し、一気に世界に知られることになった。

 現在のがん治療法は、外科手術、放射線療法、化学療法の3つがあるが、外科手術は患者の身体への負担が大きく、他の2つは副作用が伴う。治療後の転移・再発防止にも課題がある。

 既存の3つの治療法が医学的にがん患者を直すのに対し、光免疫療法はいわば物理化学的にがん細胞を破壊して治療する。これまでの医学の常識からは考えられない第4の治療法である。

高齢社会の医療費高騰を救う低コスト治療法

 安全性に続く2つ目の特徴は、低侵襲、すなわち患者の身体への負担が少ないことである。

 小林医師は「多くは日帰りの外来治療で済み、入院してもせいぜい1泊。臨床治験で治療を受けた患者さんに聞くと、『これならまた受けてもいい』という返事が多かった。患者さんが恐れることなく受けられる治療法に仕上げることが開発のポイントだった」という。 ・・・ログインして読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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