メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

解決には統計部署の専門性と独立性向上が必要だ

統計のメーカー側の経験から考える「統計不正」問題

平田英明 法政大学経営学部教授

統計でもっとも大事なのは統計作成ルールの遵守

 統計についてもっとも大事なのは、(結果としての)統計数値が公表されることではなく、統計数値がルールに基づいて適切に算出されることだ。スポーツの試合とは違って結果が全ての世界ではなく、むしろプロセス(ルールの遵守)が鍵となる。しかしながら、統計の場合はとりあえずの結果を公表すれば、その場はしのげてしまう。極端を言えば、とにかく公表されれば、その統計数値の作成プロセスが何であれ、統計ユーザーからは不正の有無は簡単には把握できない。統計ユーザーは性善説の下、統計数値を分析するしかない。

 それにもかかわらず、その期待を裏切る行為が連綿と続いていた。残念ながら、霞が関の中で少なからず統計軽視の風潮、または統計リテラシーの低さが存在していたといわざるを得ない。一方、内閣官房行政改革推進本部事務局には、EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策設計)推進委員会が設置され、にわかにEBPMに向けた人材確保や育成、そしてそれに資する統計の拡充が重要視されつつある(注3)。後者の動きが前者の問題を改善していくことを期待したいが、現状ではEBPMという言葉が独歩し、現場ではその趣旨が十分に理解されていないというのが実情だということだろう。

注3 総務省の「公的統計の整備に関する基本的な計画(第III期基本計画)」(2018年3月6日)では、公的統計とは、EBPMを支える基礎であり、行政における政策評価、学術研究及び産業創造に積極的な貢献を果たすという役割が求められている、としている。

 すなわち、統計は国の健康診断の基礎情報であり、経済情勢の的確な数値化なくして的確な問診や診察ができないことが、一部の統計作成部署において十分に理解されていなかったということだ。または、理解はされているものの、それでもなおルールを逸脱して統計作成を行う何らかのインセンティブ、またはルールを逸脱した作成を行わざるを得ない内部事情が存在していたとも考えられる。

霞が関で統計への資金・人材の配分が低下

 関係者の話を総合すると、こういった状況になってしまった背景には、3つのツケがある。第一に、霞が関における統計へのリソース(資金や人材)配分の低下のツケである。驚かれるかもしれないが、実は基幹統計ですら掲載漏れ、公表期日の遅延等が頻発している(注4)。統計の発表遅延というのは、よほどの理由のない限りあってはならず、頻発しているという事実は、統計作成の現場が回っていないことを示唆している。こういった状況の中で、今回のような問題は起こるべくして起きたと考えられる。

注4 「基幹統計の点検結果の整理について」(第2回点検検証部会配付資料、2019年3月5日)

 第二に、統計委員会への過度な期待のツケである。統計委員会とは

・・・ログインして読む
(残り:約2965文字/本文:約6075文字)


筆者

平田英明

平田英明(ひらた・ひであき) 法政大学経営学部教授

1974年東京都生まれ。96年慶応義塾大学経済学部卒業、同年日本銀行入行。調査統計局、金融市場局でエコノミストとして勤務。2005年法政大学経営学部専任講師、12年から現職。IMF(国際通貨基金)コンサルタント、日本経済研究センター研究員、ハーバード大学客員研究員などを務める。経済学博士(米ブランダイス大学大学院)。専門分野は国際マクロ経済、金融。近著は”Differentiated Use of Small Business Credit Scoring by Relationship Lenders and Transactional Lenders.” Journal of Banking and Finance、”Accounting for the economic relationship between Japan and the Asian Tigers.” Journal of the Japanese and International Economies、”Tax reform in Japan: Is it welfare-enhancing?” Japan and the World Economy、”Global House Price Fluctuations: Synchronization and Determinants.” NBER International Seminar on Macroeconomics 2012など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです