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ボーイング機の墜落を招いた自動操縦装置

抜本的な設計変更か、生産中止か。ボーイング社に打撃

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

MCASを航空会社やパイロットはよく知らなかった

 ボーイングはなぜMAX8にMCASを取り付けたのだろうか。

 MAX8はCFMインターナショナル社製のエンジンを備えている。燃費向上のために採用したこのエンジンは大推力で、パイロットが操縦かんをうっかり強めに引くと、機首の角度が想定より高くなる癖があった。

 失速を恐れたボーイングは、機首が上がりすぎた場合に備えてMCASを開発し、MAX8に搭載した。良かれと思ってしたことが、AoAの故障という思いがけない出来事によって最悪の結果を招いてしまった。

 インドネシア政府の事故調査報告書は、次の3点を事故原因として挙げている。

1. ボーイング社はMAX8を購入した航空会社に対して、MCASの機能を十分に説明していなかった。
2. ライオン・エアはパイロットに対し、MCASに異常があった場合はスイッチを切って手動操縦に戻すための手順を教育していなかった。
3. 事故機は前日の飛行でAoAに異常があり、MCASも異常動作を示していた。ライオン・エアはそれを知りながら修理をせずに再び出発させた。

 驚くのは、事故機が前日に全く同じ現象を起こしていたことである。このパイロットはMCASと12回格闘した後、運よくスイッチを切る手順を思い出したらしく、手動操縦に切り換えて無事目的地に着いた。

 LCCは機材をフル回転させることで経営が成り立っている。航空機の故障履歴の管理や報告、修理の体制が出来ていない実態が事故によって明るみに出た。

 今アジアでは航空需要が爆発的に増え、LCCが乱立している。これからも類似の事故が起きる下地がある。

「人間中心」から「コンピューター中心」に転換したボーイング

 ボーイングの責任も大きい。次のような疑問点が浮かんで来る。

1. 航空会社やパイロットに、なぜMCASの機能や遮断の手順を徹底して教えなかったのか。
2. インドネシアの事故の後、なぜAoAが異常な数字を示した原因を究明して対策を取らなかったのか。
3. AoAに異常が発生したら自動的にMCASを切るシステムに変更する必要があったのではないか。

 ボーイング機の自動操縦装置はこれまで、パイロットが操縦かんを動かせば、コンピューターより手動を優先する仕組みになっていた。人間中心の技術であり、そこがコンピューターの判断を完全に優先するエアバスとの大きな違いだった。

 しかし、今回初めて完全自動で動くMCASを導入した。ボーイングはその設計思想の転換を周知徹底しなかったために、事故機のパイロットは従来通りの航空機だと思い込んでいた可能性がある。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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