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拡大する財政の何が問題なのか

 ここまで見ると、国の予算における問題点が幾つか浮き彫りになってくる。

 一つは、予算の活用余地が乏しいことである。社会保障費や国債費の膨張により、前述の通り教育科学や公共事業、防衛予算が圧迫されているため、経済成長の糧となる人材輩出や技術開発、古くなったインフラの改修、国土の安全といった目的に十分な予算が回せなくなりつつある。

 もちろん、必要であれば財源を拡大すれば良く、実際に税収は平成元年度の51.1兆円から31年度は62.5兆円に増えてはいる。ただ、税収をGDPと比べると、元年度の11.9%から31年度は11.1%に低下しており、経済の実力から見れば税負担はむしろ抑制されていることになる。その結果、国債発行額が7.1兆円(GDP比1.7%)から32.7兆円(5.8%)まで拡大しており、不足分を借金に依存する傾向が強まっている。これが二つ目の問題点である。

拡大mykeyruna/shutterstock.com

 三つ目として、高齢化は今後も進むため、それに伴って社会保障費用の拡大が続くことも問題である。国立社会保障・人口問題研究所が2017年に試算した結果(中位推計)によると、65歳以上の人口は2015年の3,387万人から2020年には3,619万人へ、2030年には3,716万人へ増加、人口に占める比率は2015年の26.6%から2030年には31.2%まで上昇する見通しである。この予想によれば、65歳以上の人口は、今後10年間、平均で年3%増加するため、同じペースで国の年金や医療保険給付に関する予算も増えるとすれば、10年間で9兆円余りの拡大となる。毎年の予算編成の際に政府が説明する「社会保障費1兆円の自然増」とは、このことを指している。

 さらに、金利が上昇すれば国債費が大幅に増加し、他の予算が著しく圧迫されることも大きな問題であろう。先に見た通り、31年度予算における利払い費は8.8兆円、負債残高は1,100兆円につき、負債の利回りは0.8%となる。一方で、政府・日銀は物価上昇率2%を目指しており、仮にこれが実現すれば、国債の利回りは2%以上に上昇してもおかしくない。その場合、現状、8.8兆円の利払い費は22兆円以上に膨れ上がり、国債費は13兆円以上増加する。実際には、徐々に金利の高い国債に置き換わっていくため、利払い費の上昇は緩やかとなるが、他の予算を圧迫していくことは確かである。

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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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