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導入30年、消費税の歴史に何を学ぶか

「福祉財源」の約束、根強い増税反対を軽視するな

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

自自公連立で消費税を「福祉目的税」に

 国民福祉税騒動を機に細川首相の人気はしぼみ、政権は短命に終わるが、国民福祉税騒動は意外な形で実を結ぶ。デフレ不況に突入したことがはっきりしてきた日本に対し米国が貿易不均衡是正につながる景気対策として求めたものが.減税だったが、それに応じつつ直接税と間接税の比率を是正するという大義名分を掲げた税制改革の検討が政府内で進んだ。その結果、1994年秋の臨時国会で、自民、社会、さきがけの3党連立による村山富市政権が所得税・住民税の減税とセットで消費税率を1997年4月1日付で5%に引き上げるための税制改革法を成立させたのである。「活力ある福祉社会の実現」が狙いであると、社会党の委員長だった村山氏は国会で述べた。だが、消費税率が5%になった97年は銀行の不良債権処理の失敗でデフレの悪化が顕著となって金融危機を招き、増税とのダブルパンチで景気のさらなる落ち込みを招いた。

 その後、小沢一郎氏がつくった自由党が自民党、公明党と連立を組んだ自自公政権(小渕恵三首相)が1999年に成立。消費税を福祉財源にするという自由党の主張を盛り込んで、同年10月4日の連立合意文書には「基礎的社会保障の財政基盤を強化するとともに、負担の公平化を図るため、消費税を福祉目的税に改め、基礎年金、高齢者医療、介護をはじめとする社会保障経費の財源にあてる」とうたわれた。

 この時も大蔵省主税局は、消費税は何にでも使える一般財源であるべきだとして目的税化に反対したが、当時の宮沢喜一蔵相の決断で予算編成の土台となる予算総則に「消費税収は社会保障の3経費に充てる」と書き込まれた。

 この福祉財源化の流れは、2009年に誕生した民主党政権内部でさらに強まった。2012年に民主、自民、公明の3党合意で推進が決まった「社会保障と税の一体改革」も、その延長線上でまとまったものだった。この時は、財務省の主税局も反対はせず、増税の実現を優先する柔軟姿勢に転じていた。

拡大消費増税法の成立を報じた2012年8月11日付朝刊
 同年8月10日、消費増税を柱とする一体改革関連法は、参院本会議で採決され、民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。関連法には、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることが明記された。

 野田佳彦首相は官邸で記者会見し、民主党が政権に就いた2009年のマニフェストで消費増税を明記していなかったことについて「深く国民におわびしたい」と陳謝した。すでに2010年参院選で菅直人首相が「自民党(公約)の消費税10%を参考に」と述べて国民の反発を買っていたが、改革をすれば増税しなくとも財源を確保できるという民主党マニフェスト路線の最終的な修正を認めたのが野田首相会見だった。この180度の路線転換が民主党政権に対する有権者の強い不信を招き、民主党政権の崩壊と支持率低迷の要因になってゆく。

 関連法の柱である消費増税法には、消費税の使途の明確化がうたわれた。「消費税の収入については(中略)年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と、使途が明確に規定されたのである。つまり、自自公政権下で合意された3経費に民主党が力を入れようとした子育て支援を加えた4経費を消費税収の使途と定めたもので、それ以外には使えないということになったはずだった。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

ジャーナリスト、上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で取材。論説委員、編集委員を経て2014年から現職。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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