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英のEUからの離脱劇、混迷の謎を解く

時間がかかるのは悪いことか?

小林恭子 在英ジャーナリスト

思いがけない離脱派の勝利

 まず、なぜ英国がEUからの離脱を決定したのかを改めて振り返ると、具体的には2016年6月の国民投票の結果による。

 もともと、英国にとって「欧州」とは「欧州大陸」を指し、「よその国」である。地政学的に英国は欧州に入るのだが、意識的には自分たちは中に入っていない。

 第2次大戦後、ドイツとフランスを中心にした欧州統合の動きから、英国は一歩引いた位置を保っており、1973年に、経済的利点から欧州共同体(EC)に入ったものの、EUの統一通貨ユーロは導入せず、域内で国境検査なしで行き来ができるシェンゲン協定にも入っていない。

 国民投票が行われる直前、2004年以降にEUに新規加盟した旧東欧諸国からの移民が雇用、教育、医療分野で英国民に圧迫感を与えるようになっていた。2011-12年のユーロ危機では、英国は非ユーロ国であるのに財政支援を提供するよう求められたことも国民の反感を買った。

 元々ある、欧州大陸の国に対する「よその国」という意識、かつての大英帝国の記憶、EUを官僚主義の権化と見て忌み嫌う感情、新EU移民による雇用・生活面での圧迫感・・・こうした要素を政治的気運として一つにまとめ、国民投票の実施にまで持ち込んだのは、英国のEUからの脱退を目指してきた英国独立党(UKIP)だった。

 2016年6月23日の国民投票は、僅差で残留派が勝つだろうと思われていたが、予想外に離脱派が勝った。残留運動を率いていたキャメロン首相は辞任を表明し、後を継いだのが現在のメイ首相である。

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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