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英のEUからの離脱劇、混迷の謎を解く

時間がかかるのは悪いことか?

小林恭子 在英ジャーナリスト

幻想に惑わされて

 実は筆者も、当時、「一体なぜ数カ月も時間がかかるのか」と焦燥を感じた。

 今から思えばだが、本当は、そのように考える必要はなかった。「EUからの離脱手続きには相当の時間がかかる」、「時間がかかって当たり前だ」、「今後の関係を国民みんなで考えよう」という呼びかけがあればよかったのだが、「離脱なんて、あっという間にできる」、「英国はEUにとって重要なのだから、相手の方からすり寄ってくるはず」という離脱派閣僚の言動に惑わされていた。

 2年間という期限付きで、英国とEUの離脱交渉が始まった。実質的に十分とはいいがたい準備をして交渉に臨んだ英国側とは正反対に、英国を除くEU27カ国側は準備万端だった。

 まず、離脱条件を決める第1段階があり、この段階で十分な進展があったとEU側が判断したときにはじめて、第2段階として将来の通商関係についての議論を始めるという「2段階交渉案」への合意を英国に求めてきた。「将来の通商関係」こそ、英政府が最初に取り掛かりたい分野だったが、EU側は頑として耳を貸さなかった。最終的に、EU側の決定通りに交渉が進むことになる。離脱に際してのいわゆる「清算金」の支払いも、英政府側は「まったく払う必要はない」、「何とか(払わないように)するよ」と主要閣僚に何度も発言させ、国民に幻想を与え続けた。

口を封じられた議会

 現在の議会の迷走を見て、「一体、野党は今まで何をやってきたのか」と国外に住む方は思われるだろう。

 しかし、今年1月、メイ首相があらかじめEU側と合意した離脱協定案を下院に採決に出すまで、国民もそして野党議員も「離脱後、EUと英国はどのような関係にあるべきか」を決める過程から締め出されてきた。

 まず、先の第50条の発動に至る過程で、

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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