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最後にどうなるブレグジット

三度目の採決はどうなる?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

大変な野心家

拡大メイ首相=2019年1月11日、英首相官邸
 メイ首相は大変な野心家である。

 12歳で政治家を志望し、サッチャーが首相に就任したときは、私が初めての女性首相になるはずだったのにと悔しがったとも伝えられている。キャメロンが国民投票で敗北した後、多くの政治家が尻込みする中で、一人だけの首相候補となり、念願の首相となった。

 彼女はEU離脱を成功させ、歴史に名を残す首相となりたかったに違いない。国民投票時には残留を唱えていたが、首相就任以降頑な離脱派となる。国民投票は僅差で離脱派が勝利した。今国民投票をすれば、残留派が勝利する可能性が高い。

 それなのに、国民は意思表明をしたとして、二度目の国民投票を断固として拒むのは、どうしても自分でEU離脱を実現したいからだろう。“ブレグジットはブレグジットである”という言葉に、EU離脱にかける執念を感じる。逆に、自身の協定案については、議会が反対の強い意思を2度も表明したのに、三度目の採決を目指している。

 したがって、どのような批判を受けても、歴史的な敗北を喫しても、自分がEUとまとめた協定案にあくまでもこだわる。ある意味で、サッチャーと同じく“鉄の女”である。

EUが合意した協定案か、総選挙か国民投票を行うか

 これはEUとの交渉にも現れている。

 協定案を再度否決され、離脱延期の議会決議を受けた後、メイ首相はEUに離脱延期を申し入れた。私が驚いたのは、離脱延期の期限を6月30日までの短期間としたことである。

 6月30日までに、今の協定案をEUと再交渉するのも、議会を解散して総選挙したり国民投票をしたりして、英国の基本的なポジションを見直すことも、不可能である。これはメイ首相の協定案を再度議会に諮り、それを可決させた上で、その実施に必要となる国内の法律や制度を調整するために6月30日までの期間が必要だと言っているだけのものである。つまり、延期をする場合でも、メイ首相は自身の協定案以外のオプションをEUに示さなかったのである。

 あきれかつ怒ったのはEU加盟国である。延期すること自体、マクロン仏大統領は明確な理由がない限り認められないと反対していたのを、メルケル独首相がようやく説得した。二度も大差で否決された協定案をメイ首相が可決まで持って行けるとは思えない。6月30日までとするメイ首相の提案は拒否された。5月23日に5年に一度の欧州議会の選挙が始まる。英国議会が協定案を可決したとしても、それを実施する法律制度を5月22日までに整備して、欧州議会選挙前に離脱するよう求めたのである。

 もちろん可決される可能性は低い。その場合は、合意なき離脱をするか、議会の解散や国民投票を行うために必要な長期の離脱延期をするか、これを決定する期限を4月12日としたのである。もし長期間の延期となると、イギリスはEU加盟国に留まるので、5月23日からの欧州議会選挙に参加することになる。その場合を考慮して、4月12日までに選挙準備を終える必要があるという判断である。

 そのうえで、EU側は、何をするのか明らかにしなければ長期間の延期は認められないと主張した。これは当然の主張だが、イギリスの離脱強硬派に心理的な影響を与えた。長期間の延期なら、合意なき離脱は既にオプションとしてなくなっている。合意なき離脱をするなら、4月12日にそうすれば良いだけだからである。

 とすると残るオプションは、

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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