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ハーバード大学 VS フェイクニュース

「フェイク」と「ヘイト」が結びついた現実に真っ向勝負を挑む

松本一弥 朝日新聞夕刊企画編集長、Journalist

人々は大きな恐れと不安の中に放り込まれている

メキシコ・ティファナの国境の向こうに見える新しい壁の試作品。国境警備隊が白い車を止めて警備していた=2018年11月拡大メキシコ・ティファナの国境の向こうに見える新しい壁の試作品。国境警備隊が白い車を止めて警備していた=2018年11月

 国の違いを越えて「フェイク」と「ヘイト」が結びつき、「事実かどうかはどうでもいい、面白ければそれでいい」といった安直な風潮が社会に広がっていくのは、その誘惑に勝てないという意味において、大げさにいえば人類がその内側に抱える「脆弱(ぜいじゃく)さ」がそのまま露呈しているのだとはいえないだろうか。私たちはそういう大きな社会変化と向き合い、闘っているのではないか――そんな質問を、取材後、ドノバンにメールで尋ねてみた。

 「それは非常にいい理解の仕方だと思います」。そう記した後、ドノバンの文面はこう続いた。

 「人々は今、非常に大きな恐れと不安の中に放り込まれています。職業がなかなか安定しないとか、いろいろな資源が枯渇し始めているとか、ふだんの生活を脅かすような材料は無数にあります。そんな時、人々は、ほんとうはそうしたものにきちんと向き合い、事実を受け入れていかなければいけない。でもなかなかそうはできず、真実を直視できないまま、自分の感情に強く訴えかけてくるもの、自分が信じたいものに飛びついてしまう。でもその行為こそがヘイトを助長させることにつながっていくのです」

 ヘイトに汚染されたフェイクニュースがネット空間で日々拡散される中、この闘いにはたして勝てるだろうか。そんな問いをさらにドノバンに投げてみた。

 ドノバンの返事はこうだ。

 「思うに、私たちは自らの手でこの状況に私たち自身を追いこんでいるのですから、そこから自力で這(は)い上がってくることもまたできるはずです。それはつまり、結果的にうまくいかなかった過去を肯定して懐かしく振り返るのではなく、むしろ、よりよい未来があり得ると信じること。それこそが大事なのだと考えています」(文中敬称略、『「右派メディアが突出した二極化」が進んだ米国』へ続く)

(注1)Soroush Vosoughi,Deb Roy,Sinan Arai, The spread of true and false news online.Science,359,1146 (2018)
(注2)ツヴェタン・トドロフ『民主主義の内なる敵』(みすず書房、大谷尚文訳、2016年)、221頁
(注3)2018年10月29日付朝日新聞朝刊
(注4)2018年12月17日付朝日新聞朝刊

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筆者

松本一弥

松本一弥(まつもと・かずや) 朝日新聞夕刊企画編集長、Journalist

1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。朝日新聞入社後は東京社会部で事件や調査報道を担当した後、オピニオン編集グループ次長、月刊「Journalism」編集長、WEBRONZA(現「論座」)編集長などを経て現職。満州事変から敗戦を経て占領期までのメディアの戦争責任を、朝日新聞を中心に徹底検証した年間プロジェクト「新聞と戦争」では総括デスクを務め、取材班の同僚とともに石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、JCJ(日本ジャーナリスト会議)大賞、新聞労連ジャーナリスト大賞を受賞した。早稲田大学政治経済学部や慶応大学法学部では非常勤講師などとしてジャーナリズム論や取材学を講義した。著書に『55人が語るイラク戦争ー9.11後の世界を生きる』(岩波書店)、共著に『新聞と戦争』(上・下、朝日文庫)。

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