「10連休」、あなたはどう過ごす?
2019年04月09日
長時間労働による過労死事件などを契機に「働き方改革」が進んでいる。4月1日には、有給休暇取得の義務化を含む「働き方改革関連法」が施行され、「働き方」と表裏一体である「休み方」改革にも注目が集まっている。
「どう働くか」は、「どう休むか」と不可分の関係だ。企業にとって従業員がいかに効率的に働いて生産性を高めるか、働く者にとってワーク・ライフ・バランスを図り、いかに豊かな人生を送るか、ともに重要な課題だろう。
「働き方」=「仕事の仕方」、「休み方」=「休息の取り方」ということではなく、それぞれの改革が相互にもたらす効果が重要だ。仕事=ON、休息=OFFと表現されることがよくあるが、「休息」を取ることは単に仕事をしない「OFF」の時間を意味するものではない。
適度な運動が早く疲労を回復するように、能動的に休息の回路を「ON」にすることが有効になる。戦略的な「休み方」は仕事のパフォーマンスを高め、新しいアイデアを生み、高い付加価値の創造につながるからだ。
これまで「休息」は仕事の疲れを癒やすなど、仕事の補完的役割を果たすと考えられてきた。しかし、昼寝や散歩、遊びや長期休暇などの「休息」は、心身の疲労回復だけにとどまらず、人間の創造性と生産性を向上させ、仕事の付加価値を高める。
連続して長く働くことが必ずしも生産性を高めるわけではない。計画的な仕事の中断がむしろ人間の集中力や生産性を高め、多くの良質な成果を生み出す。すなわち「働き方」と「休み方」の“よい関係”が重要なのだ。
音楽の楽譜には、音符の間にさまざまな長さの「休符」が挿入される。無音の休符があることで躍動的な音楽が創造される。人生も「労働」と「休息」がうまく組み合わさることで豊かな素晴らしいものになるのではないだろうか。
長時間労働を解消し、だれもがムリなくワーク・ライフ・バランスを実現するためには、あらたな雇用・労働政策と企業の人事制度を確立するとともに、個々人の働き方に関する意識改革も必要だ。
時間的制約もなく、ひたすら体力の限界まで働くような働き方は、やがて“昭和の残滓”になるだろう。女性の活躍推進も、多くのサラリーマンが高度経済成長期に私生活を犠牲にしたような働き方であっては意味がない。しかし、経済効率性が最優先される現代社会においては、「あそび」や「ゆとり」の入り込む余地はまだ少ない。
「あそび」には、『自動車のハンドルのあそび』などのように、「ゆとりや余裕」(Redundancy)という意味がある。人口減少時代には労働生産性の向上が要求される一方、どのようにすれば「あそび」や「ゆとり」を持って効率的に働くことができるだろうか。
日常生活の中で気軽に「あそび」や「ゆとり」を持つためのひとつの方法として「散歩」が有効だ。古代中国では、不老不死などに効く「五石散」という粉薬を服用したとき、副作用を防止するために歩き回ったことが「散歩」の語源になったそうだ。「散歩」には解毒作用があり、現代社会の仕事のストレスなどを体外に排出してくれるのだ。
長時間労働をなくす制度が整うには時間を要する。また、制度があっても運用次第では、過労死を完全に撲滅することは難しい。われわれ一人ひとりにできる自己防衛策のひとつは、
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