カーシェア急拡大で自動車業界大揺れ
マイカーは24時間のうち5%しか動いていない。「所有」より「使用」の時代だ。
木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
年率20%超の急成長
カーシェアが日本でも急拡大している。車の所有者が運転手になるライドシェアではなく、近所の駐車場にある業者の車をネットで予約し、好きな時間だけ利用する簡便なシステムである。20、30代の若者に人気があり、自動車メーカーは「車販売の減少につながる」と警戒感を強めている。
いま自動車産業に起きている大変革はCASEと呼ばれる。Cはコネクテッド(つながる)車、Aは自動運転、Sはシェアリング、Eは電動化。自動車の販売にとっては、とりわけSのインパクトが大きい。
上のグラフは、公益法人・交通エコロジーモビリティ財団が昨年発表したデータである。カーシェアに使われる車の台数は約3万台、会員数は140万人に迫っている。年率20%を超える急成長だ。
業界最大手の「タイムズカープラス」は、元々は全国で駐車場を経営する企業である。その駐車場の一部をカーシェアのスペースに充て、全国9000か所以上に車両台数1万8000台を配置し、会員数約80万人を獲得している。

タイムズのカーシェア用の駐車場。左側は車を貸出中の空スペース=横浜市内で
会員は、車を使いたいときはスマホなどで車種や利用時間を予約し、自分で駐車場に行ってICカードで開錠して乗る。利用料金はガソリン代、保険料込みで15分206円からで、6時間パック4020円などのプランがある。乗り終えたら車内をきれいにし、元の駐車場に戻して施錠する。
レンタカーの場合は駅前などにある営業所に出向いて店舗スタッフと対面で手続きをする面倒があるが、カーシェアはネット上で利用の手続きや支払いがすべて完了する。給油もガソリンスタンドでサインするだけだ。
米国では、2009年に生まれたウーバー(ソフトバンクが出資)やリフト(楽天が出資)のようなライドシェアが盛んだが、これらは日本では「白タク」に当たるとして原則禁止されている。その隙を突いて、ライドシェアでもレンタカーでもないカーシェアが拡大しているのだ。