カーシェア急拡大で自動車業界大揺れ
マイカーは24時間のうち5%しか動いていない。「所有」より「使用」の時代だ。
木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
マイカーは24時間のうち5%しか動いていない
カーシェアの3万台は、レンタカー事業の乗用車34万8千台の約9%に相当する。レンタカーの台数も少しずつ増えているが、カーシェアの拡大スピードはそれをはるかに上回る。
カーシェア事業は、全国に多くの駐車場を持つ事業者ほど有利になる。このため事業者の間で今、企業や個人経営の駐車場の取り合いが激しくなっている。ビジネスモデルの変革が起きているのだ。
カーシェアが急拡大する理由は何だろうか。元ポルシェ・ジャパン会長で自動車評論家の黒坂登志明氏は「一口でいえば、若者は経済的にマイカーを買う余裕がない。マイカーを買っても1日24時間のうち95%は動いていない。費用対効果の点で車が『所有』から『使用』に移行するのは自然な流れだ」と指摘する。
下の青いグラフは日本の1世帯平均所得の推移を示している。年金暮らしの高齢世帯が増えていることもあり、1995年ごろをピークに約20年間減り続け、直近は約560万円である。少数の富裕層が平均値を上げているので、実際の所得別では400万円未満の世帯数が56%を占める。
平均所得の減少と連動するように、車の国内需要(橙色のグラフ)が先細っている。新車購入には最低100万~200万円はかかる。さらに年間の維持費(ガソリン代、車検代、保険料、税金、駐車場代など)も、都市部であれば40万~50万円は必要になる。
政府の消費支出統計では、スマホなどの通信関連費用が年々増える一方、自動車関連費用は減る傾向にある。多くの世帯が車所有の負担に耐えられなくなっているのだ。
ブロックチェーンがカーシェアを拡大する
技術面からも、カーシェアに拍車がかかりそうだ。仮想通貨ビットコインなどの基礎技術として使われるブロックチェーンの応用である。
ブロックチェーンは、資産や事業を管理するのに参加者全員が記録を共有するシステムである。管理者を置かない代わり、全員がデータの履歴を監視するので、ごまかしができない。
例えば、車を友達5人で1台購入する。5人はスマホで予約して使い、空き時間は外部の人に賃貸しをする。マイカーを1人で1台買えばムダが多いが、共有すれば有効に活用できて収入にもなる。初めから投資目的で車を共同購入するケースも考えられる。

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