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インバウンド拡大と東京五輪に浮かれていられない

観光で大事なのは量より質。「ソコソコの満足度」ではリピーターは増えません!

茶田誠一 みちトラベルジャパン株式会社 代表取締役社長

旅行者数より満足度

 世界中から来られるお客様は、人生の楽しみ方や価値観も千差万別で、当然ながら旅でこだわるポイントも旅のスタイルも異なる人達だ。

 そんな多様な期待と不安のある旅行者に常に満足してもらうことは大変なことも多い。量を増やすために画一的な対応をすると、最大公約数以外の様々な期待には応えられない。お客さんごとの様々な期待を把握し、それらに応じたカスタマイズした柔軟な対応をするなど、サービスの「質」が不可欠になってくる。

拡大屋久島の自然を楽しまれるお客様。多様な魅力のある旅行デスティネーションである日本では、お客様の期待も多岐に亘り、その期待に応えることが大切である。
 全国の通訳ガイド、ホテルや旅館の宿泊関連、レストラン関係、ドライバーなどのサービス業の方々、また、様々な日本文化や魅力を海外に伝えて下さる方々と協力し、心をこめたサービスを提供してはじめて高品質の旅行サービスが提供できる。

 そして、その結果、リピートしてくれるお客様が生まれるのだ。

 弊社でも毎年のように利用してくれて、日本の全国の旅を楽しんでくれるお客さんがいる。実際、お付き合いさせて頂いている通訳ガイドや宿泊関連の方々で、「質」にこだわったプロフェッショナルの方々のサービスは素晴らしく、お客様からも絶賛される。

 そのように日々の現場で「質」の重要性を経験していると、訪日旅行についての世間の話題が、市場規模の予測などの量的な面だけが独り歩きしているようで心配になる。

 「東京オリンピックまでは増えますね」という論調も、訪日旅行者が日本の何に感動し、逆に、どういう点には満足せずに帰国されたのかなどの質の視点が抜けていることが多い。

 短期的に「数」を増やすこと自体を目的化してしまったら、「質」への意識が弱くなり、お客さんの満足度が低下するだろう。来日した方々が「一度は行ってみたが、リピートするほどでもない」と思うようではいけない。

 私としては、訪日旅行者数(=量)よりも訪日客の満足度や感動(=質)がより肝心、と考えている。

 誤解を避けるために付言すると、観光客数が重要ではないという意味ではない。あくまで、「質」に焦点を当て、高い満足度を実現した結果、その評判が広まり、緩やかでも持続的に増加する方が、一過性の拡大はしたものの、その後満足度が高まらず数も失速してしまう、という状況よりも好ましい、という意味である。

 ここでいう目指すべき「質」とは、非常に高い水準でなければならない。世界中を旅した旅慣れた顧客も感動するような、文化的にも知的にも好奇心が高い人も感心するような水準である。

 軽い調子の「良かった」や「いいね」という程度の感想をもって「世界が日本に注目」などと浮かれていては、今後、魅力的な旅行デスティネーションになるために長期的に何をすべきかが見えてこない。

 世界から来日してくれる人には、芸術や文化に関心の高いクリエイティブな顧客層、世界中を旅している旅慣れた顧客層、異文化への知的欲求が高く、旅行を通して自分の人生を更に豊かなものにしたいと希望しているような顧客層など、目の肥えたお客様も多い。そのような方々の心にも響き、リピートしてもらえるような高い水準を目指さなければならない。

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筆者

茶田誠一

茶田誠一(ちゃだ・せいいち) みちトラベルジャパン株式会社 代表取締役社長

奈良県出身。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)勤務を経て、2006年、当時では珍しいインバウンド専業の旅行会社「みちトラベルジャパン株式会社」を設立。世界中からの顧客にテイラーメイドの訪日旅行サービスを提供。関連のコンサルティングなども実施。通訳案内士。京都大学法学部卒業、シカゴ大学経営大学院経営学修士。

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