山口智久(やまぐち・ともひさ) 朝日新聞オピニオン編集長代理
1970年生まれ。1994年、朝日新聞社入社。科学部、経済部、文化くらし報道部で、主に環境、技術開発、社会保障を取材。2011年以降は文化くらし報道部、経済部、特別報道部、科学医療部でデスクを務めた。2016年5月から2018年10月まで人事部採用担当部長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
再生エネのコストは2030年以降、劇的に減ることはあまり知られていない
また、再エネが「高価」と感じさせるものとして、2012年7月に始まった固定価格買い取り制度がある。
太陽光や風力がつくった電気を、電力会社が決まった価格で買い取るもので、その分の負担は電気料金に「賦課金」として上乗せされる。
資源エネルギー庁のサイトにある「再エネコストを考える」にあるグラフをみると、賦課金によって標準家庭の負担額は年々増えており、2017年度時点で月686円。さらに今後も果てしなく膨らんでいくイメージを抱かせる。わざわざ赤い矢印まで引いている。
ところが、買い取り価格は年々下がっていくのと、買い取り期間は10年と決まっている。そうなると、どこかの時点で負担が減るはずだ、とずっと思っていたので安田さんに聞いてみたところ、環境省の試算について教えてくれた。
環境省が示したある見通しでは、負担は増えていくものの、2030年以降は劇的に減っていく。もう一度、資源エネルギー庁のグラフを見直すと、2030年以降の見通しは示していない。なぜだろう。何か不都合でもあるのだろうか。
つまり固定価格買い取り制度は、将来世代が廉価で安全な電気が手に入れられるように、発電設備の初期投資を現役世代が負担しようというものなのだ。
これは、現役世代の利益のためにツケを将来世代に回す国債とは逆の発想だ。国債の大量発行にあまりにも慣らされてしまった人たちは、それとは逆の発想があることがにわかに信じられないだろう。
安田さんによれば、2030年以降は負担が劇的に減るという「便益」について、太陽光発電事業者でさえも理解していないことがある、という。
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