日米貿易交渉「日本が攻められている」という妄信
切羽詰まっているのは米国だ。日本は圧倒的有利にあることを認識すべきだ
山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

日米閣僚級による通商協議に臨む茂木敏充経済再生相(左)とライトハイザー米通商代表部代表(右)=2018年9月26日、米ニューヨーク
日本は圧倒的有利なのに
日米貿易交渉が4月15~16日にワシントンで開催される。
海の向こうのアメリカから伝わってくる情報は、日本に厳しい要求ばかりである。ムニューシン財務長官は、日本が円安に導入してアメリカへの輸出を増やさないようにするという為替条項を入れるべきだと主張する。パーデュー農務長官は、農産物の関税等でTPP以上の譲歩を日本に要求するとか、農産物だけ切り離して先行合意すべきだと主張する。
問題は、一部の報道を除いて、これが実際の交渉担当者とか業界とかに裏付け的な取材をされることなく、そのまま報道されていることである。
日本からの発信も同じだ。ある主要紙は3月29日、TPP11や日・EU自由貿易協定の発効でこれらの協定参加国の関税が低下したことにより、日本市場でアメリカ産の牛肉や豚肉のシェアが減少していると報じ、アメリカの生産者の不満はトランプ政権への圧力となり、4月にも始まる物品貿易協定交渉で日本への風圧が強まる可能性があると結論づけている。
報道している側も、日本が一方的に攻められているという構図を信じているようだ。これは日本政府も同じだろう。
しかし、これまで何度も本誌で論じたとおり、日本は圧倒的に有利な立場にある。それなのに、一方的にアメリカから押しまくられた過去の日米通商交渉のトラウマから、日本は常に受け身でアメリカの要求をどうしたらしのげるかという発想しかできないのである。