合法化された非正規公務員
そんななか、公務の世界でも2017年、地方公務員法と地方自治法が改定され、非正規公務員をめぐる「改革」が行われたかに見える。だが、これは、「公務員は常勤が原則で、不安定な短期雇用の非正規は一時的な仕事に限る」というこれまでの原則を大転換し、1年契約の「会計年度任用職員」を制度化することで非正規を合法化するものだった。ここでは、短期雇用でもフルタイムなら正職員並みの「給与」「手当」を保障する「改善策」が導入されたと言われている。だが、パートについては低待遇のままで、「期末手当を支給できる」とあるだけで、支給を義務付けるものではない。その結果、労働時間を短くさえすれば従来通りの低賃金の非正規が維持されうる仕組みとなっている。
総務省が2016年に実施した「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査結果」によると、表のように、地方の非正規公務員のうち3分の1の約20万人がフルタイムだ。非常勤職員という名称なのに常勤、という奇妙な例も少なくない。「会計年度任用職員」制度は、これらの働き手の処遇を実態に合わせて常勤並みに引き上げるのでなく、労働時間を削ることで「パート」の体裁を整え、低賃金を温存することを可能にする。
今年3月、公務非正規問題に取り組んできたNPO法人「官製ワーキングプア研究会」と労組役員、弁護士、非正規の当事者らが初めて連携して行った「公共サービス非正規労働者の電話相談」からは、こうした問題点が現実のものになりつつあることが浮かんでくる。ここには、職場の業務研修で講師が「新制度は(手当などの)経費がかさむので外部委託を検討したらどうか」と助言したという報告や、フルタイムで働いてきた臨時職員が、給与や手当支給の発生を避けるため「1日5分勤務時間を短くしてパートにする」と言われた、などの相談が寄せられたからだ。正規職員の労組が新制度の説明をし、非正規当事者の意見や要望の聞き取りはしてくれなかったという訴えや、嘱託職員が職場で文書を整理していたら「2020年には嘱託員制度が廃止になる」と書かれたものを発見し、自分も雇止めになるのかと驚いて聞いてきた例など、非正規の頭越しの措置も問題になった。妊娠や出産制度などについての相談もあったが、短期契約を固定化した「会計年度任用職員」制度では、これらの休暇の取得を申し出ると次の契約更新を断られるという懸念は解消されない。