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[45]非正規公務員、仰天の「クビ」の理由

公務員に労働法研修の義務付けを

竹信三恵子 ジャーナリスト、和光大学名誉教授

労働権を守る行政は暮らしやすさの基礎

 問題の解決のために、公共事業を優先して住民の生活サービスに必要な人件費が後回しにされてきた予算のあり方を変えていくことや、税収自体の確保が必要なことはいうまでもない。人件費のひっ迫が正規を非正規差別へと追い詰めていることは否定できないからだ。だが同時に、公務員の労働法や労働権への敏感さを高めることなしには事態が改善される保障はない。そのために必要なのが、幹部も含めた労働権研修の徹底だ。これは、労働力不足が問題化しているいま、公務の人材確保にとっても不可欠だ。

 韓国・ソウル市では朴元淳市長が、市民生活の豊かさの基礎として「労働尊重都市」を掲げ、市の非正規職員は市民でもあるとして、その暮らしを守るため、派遣や業務委託の職員も含め、急ピッチで正規職転換を推し進めてきた。ここでは、間接雇用を直接雇用とすることで、受託企業の利益部分や消費税が節約され、その財源を非正規の待遇改善に向けるなどの方策をとっている。また、市内の飲食チェーン会社などと協定を結び、「バイトの雇用改善に取り組む店」を表す表示を店頭に掲げてブラックバイトをなくし、若者が安心して働ける環境も目指している。

 日本では今年1月、千葉県野田市で小学生を虐待死させた父が逮捕されたが、このような虐待の防止に必要なスクールカウンセラーやDV相談員、家庭児童相談員のほとんどが、不安定雇用の非正規職員によって担われ、十分な支援ができなくなっている現状も明らかになりつつある(「官製ワーキングプア研究会」声明参照)。労働権に敏感な行政なしでは住民の暮らしやすさは生まれない。私たちも住民もまた、やみくもな「公務員たたき」から、非正規も含めた公務労働者が力を発揮できる、人権に配慮した予算や労務管理へと視点を変えていくことが自身の安心につながることを、自覚すべきときが来ているのかもしれない。

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筆者

竹信三恵子

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ) ジャーナリスト、和光大学名誉教授

和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から和光大学現代人間学部教授・ジャーナリスト。2019年4月から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。共著として「『全身○活時代~就活・婚活・保活の社会論』など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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