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自動車メーカー 不正・隠蔽の連鎖

不正の根底にあるのは品質の劣化だ。技術力で負けている実態を冷静に直視しよう

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

不正の根底に技術力の劣化

 他の社の排ガスや燃費データの改ざんとなると悪質度はさらに高い。メーカーの技術力が世界の環境規制の強化や他社との性能競争についていけず、結局、データのでっち上げに走ったのだろう。三菱自動車やスズキはそのケースだった。

 筆者は20代のころ、勤めていたメーカーで苦い経験をした。入社2年目のある日、グループ企業が生産する工作機械向けの特殊モーターの精度検査に1人で出向いた。数十個のサンプルを検査すると、なんと半数が規定の精度から外れていた。戸惑っていると、知った顔の人々が「何とか合格にしてほしい」と懇願してきた。だが、筆者が電話した上司は一言、「それは受け入れられない。全品やり直しと伝えてくれ」。

 2か月後の再検査でパスしたが、もし情に流されていれば、筆者が検査不正の当事者になっていた。検査不正が行われる根底には必ず技術力や製造品質の劣化がある。不正はその根底の問題を隠すために行われるのである。

電気製品に近づく自動車

 2000年以降、車の電動化やモジュール化が急速に進んだことも不正の一因になっている。

拡大電動化が進む車。内部にはマイコンやセンサーが詰め込まれている=CEATEC会場で

 マイクロコンピューターは1台の車に数十個も積まれ、1億行以上もあるソフトウエアで制御する(上の写真)。電子システム系のコストは全体の40%近くを占め、エンジンも燃費も排ガスもコンピューターで制御する。モジュール化の進展で、車の生産はパーツを組み合わせて作る電気製品に近づいている。

 かつてはメカ部品の「擦り合わせ」で車を仕上げる技が日本の強みだったが、今は電動化によって車メーカーが手を出せる部分が減っている。このため完成検査の段階で技術的な不都合が生じると、検査法の勝手な運用やデータ改ざんで解決を図ろうとするのである。

内部通報制度の普及が不正の暴露に拍車

 不正が次々に表面化するもう一つの要因は、 ・・・ログインして読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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