稲田清英(いなだ・きよひで) 朝日新聞オピニオン編集部次長
1972年生まれ。1997年に朝日新聞社に入り、東京本社や西部本社(福岡)の経済部を経て、2006年にソウルに留学して韓国語を学んだ。2008~11年にソウル支局員。東南アジアや中国、欧州などでも出張取材。2018年7月から現職。共著に「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
大学進学率7割。それゆえに大卒が報われない社会。そこには根深い構造問題がある
韓国の若者の失業問題は、「大卒社会」であるがゆえの根深い構造問題だからだ。
高学歴化は、若者の望む就職先と現実とのミスマッチを拡大させた。毎年、「大卒」の若者が多く輩出されるようになり、当然といえば当然だが、「その努力や肩書に見合う」と考える職を、欲するようになる。支えてきた親も「大学まで出したのだから、しっかりした企業に就職しなさい」となる。
多くが望む就職先といえば、「安定」の象徴として大人気の公務員をいったんおいて考えれば、「大企業の正社員」がまず代表的な存在だ。ただ、そうした職場はそもそも非常に限られている。
2月6日公開の記事『自営業大国・韓国 最低賃金引き上げへの苦しみ』でも触れたが、韓国経済は、成長を引っ張ってきたサムスンに代表される財閥系大企業の存在感が圧倒的。そうした一部の大企業以外には、満足のいく待遇が得られる雇用の受け皿が十分にない、という構図になっている。
韓国政府の資料によると、大企業の正社員の賃金を100とすれば、大企業の非正社員は63、中小企業は正社員でもさらに低く53程度になるとされる。福利厚生などでも劣るケースが多いほか、「世間体」という部分でも敬遠されがちだ。
実際は中小企業といっても多様で、国内外にビジネス展開し、成長性もある中小・中堅企業やベンチャー企業などもあるのだが、若者の根強い大企業志向を大きく変えるまでの存在感にはまだ遠い。本人だけの問題ではなく、親の世代の期待や価値観も大きく影響している。
「娘に『結婚を考えている相手を紹介したい』と言われた韓国の親がまず聞くのは、