諏訪和仁(すわ・かずひと) 朝日新聞記者
1972年生まれ。1995年に朝日新聞社入社、東京経済部、大阪経済部などを経験。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
花王の中興の祖と言われた丸田芳郎さんと花王の歩みをたどった「一心不乱」
会社に入ると、丸田さんはそれまでとは違う存在です。勤め先の社長ですから。それでも、私がいた和歌山研究所を訪れたときには、「澤田君どう、実験おもしろいか」「頑張ってるか」とか気軽にお声をかけてくださいました。
丸田さんの考えは、研究というのはわくわくしないといけないし、その反面、本質を考えてやれと。表向きだけでやっちゃだめだと。それから、何度もおっしゃっていたのは、「社会に役に立つモノを作れよな」って。儲かるモノを作れじゃなくて、社会の役に立つモノを作れと。結果として、それはビジネスに跳ね返ってくるから。私はその言葉を覚えていて、最近社内で言っているんですよ。
新しい商品を出しました、売れませんでしたというときに、担当者は「モノはよかったんだけど売れなかった」とか言うんです。いや、ちょっと違うと。結局、役に立ってなかったから、売れてないんだと。本当に役に立つものなら、売れてしかるべきです。それを棚に上げて自分たちは一生懸命やったのに売れなかったというんです。世の中に本当に役に立つものは使ってくれるはずだし、いっぱい使ってくれれば、それはビジネスにはなるわけです。
ですから、売らんかなが前面に出すぎたり、他社に競合して自分たちはこうやるんだって消費者視点じゃなくて競合視点になってモノづくりをやったり、お金をいっぱいかけてとにかく宣伝をして売るというんじゃだめです。それじゃ絶対売れない。使ってくれた人が、「これはいい」とどんどん輪が広がって、花王さんいいもの作ってくれたねと。結果として、できれば世の中が変わるくらいの製品を出して、それが大きなインパクトとなって企業業績に反映されていくようにならなければだめなんです。
だから、売れないということは社会に十分役にたってないということです。そういう考えでもう1回やり直した方がいいんじゃないかと最近ずーっと言ってるんです。
社長になると、