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「エイジレス社会」の働き方

求められる適切な「社間距離」

土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

David Prado Perucha/shutterstock.com

「定年退職」か「定年退社」か

 政府の未来投資会議は、企業の継続雇用年齢を65歳から70歳に引き上げる方針を示している。希望する高齢者がより長く働けるようにすることで、人手不足を解消し、医療・介護・年金など社会保障制度の安定化を図るためだ。

 これまでも2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法が、希望者の65歳までの雇用延長を企業に義務付けている。すでに定年を65歳まで延ばした企業もある。今後は「生涯現役社会」を目標に、さらに定年を延長する動きも出てこよう。

 「定年」とは官庁や企業などで退官・退職する決まりになっている一定の年齢のことだ。これまでは「定年退職」という言葉が広く使われてきた。それは多くの人が終身雇用のもとで長く同一企業で働き、「定年」はすなわち「退職」を意味したからだろう。

 今日では定年後も嘱託で仕事を継続したり、新たに独立した個人事業主になって働いたりする人も増えている。人生100年時代には定年は退職とは限らず、年齢の定めのない新たな仕事への出発点かもしれない。多くの人にとって「定年」=「退職」ではなくなる日も近いのではないだろうか。

定年後の「雇われない」働き方

 現在の年功要素の強い賃金体系では、単純な定年延長は企業の負担増につながるだろう。今後は同一企業での再雇用や定年延長ではなく、一人ひとりが定年後に自らの能力を発揮できるような企業に「雇われない」働き方を実現することが重要だ。

 そのためには企業の柔軟な雇用制度の充実とともに、フリーランスという自由度の高い働き方の就労支援が求められる。高齢者をはじめ全世代のリカレント教育(生涯教育)を進め、フリーランスのセーフティネットとなる病気やケガを補償する労災保険の適用なども必要だ。

 今日では、子育てや介護、病気治療など時間的制約を抱えながら働く人が増えている。フリーランスという「雇われない」働き方の促進は、労働市場の流動性を高め、「一億総活躍社会」の実現に資するだろう。

 長寿時代の定年は人生におけるひとつの通過点だ。年間に約45万人もの人口の自然減が起こっている日本社会にとって、一律に年齢で強制退職をせまる定年制を見直す一方、だれもが年齢の制約を受けずに、個々の能力に応じて活躍できる「エイジレス社会」の実現は急務ではないだろうか。

会社との適切な「社間距離」を保つことが重要だ

 日本の高度経済成長期には「エコノミック・アニマル」や「社畜」という言葉が聞かれた。当時、従業員が私生活を犠牲にしてまで働き続けたのは、それだけの見返りを期待できたからだ。会社は企業福祉の中で従業員の家庭生活を丸抱えし、

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