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見たくなかった安倍訪米~甘すぎる対米貿易交渉

お土産をどっさり持って行く、与えるだけの外交。トランプに近すぎるのは危険だ

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

見たくなかった安倍訪米

拡大首相官邸のホームページより
 その一方で、今度の連休初めには、あまり見たくない光景を目にした。安倍総理の訪米である。

 朝日新聞は、安倍総理がともにゴルフをするなどトランプ大統領にべったりくっつくさまを、抱き付き外交と形容した。

 その一方で、短い期間に日米の首脳が3度も会合することを、日米関係が良好なことを示すものだと手放しで評価している人もいる。

 しかし、頻繁に会うことは、外交関係が良好であることを示すものではない。むしろ、問題が生じているほうが、頻度は高くなる。ブレグジット問題で危機に陥ったイギリスのメイ首相は、EUのユンケル欧州委員会委員長やトゥスク大統領とたびたび会合を持たざるを得なかった。

 トランプ大統領も、安倍総理の訪米で、ことのほか上機嫌になったようである。

 先ほど公表された報告書で、2016年大統領選のロシア介入疑惑を捜査してきたムラー特別検察官を解雇するよう関係者に圧力をかけたなど、司法妨害をしたのではないかという疑いがもたれ、民主党内からは大統領を弾劾すべきだという声もでてきている。そのなかで、安倍総理によいしょされたことは、ひさびさに嬉しい出来事だったに違いない。

どっさり持って行ったお土産

 しかし、安倍・トランプの仲が良くなって、日本に何か良いことがあるのだろうか?

 かつて中国がアジアの大国だったころ、中国は周辺国からの朝貢外交を「薄く来りて厚く帰る」と表現していた。中国は周辺国が持ってくるお土産をはるかに上回る価値のお土産を持たせて、帰国させるというのである。

 安倍総理の訪米を朝貢外交と呼ぶのは適切ではないかもしれない。アメリカは世界一の経済大国である。昔の中国なら、日本が持っていったお土産を上回るお土産を安倍総理に与えて帰国させたはずである。

 しかし、報道に接する限り、安倍総理はたくさんのお土産を持って行ったのに、ほとんど何も持たずに帰ったようである。

 記者会見でトランプは日米の貿易交渉は5月にも終了するといって、最低限参議院選挙後に妥結させたい安倍総理を慌てさせた。しかし、こうした発言をするには、その前提として安倍総理から相当な譲歩・言質を得ているに違いない。

 また、その直後に開かれた集会では、トランプは支持者に対して、安倍総理はトヨタなどの日本企業がアメリカの自動車工場に400憶ドル(4兆6千億円相当)の対米投資を行うと約束したと発言している。本当なら、かなりのお土産である。

 世界一の金持ち国家に与えるだけ与えて、自らは何ももらわずに帰るというのでは、金持ちアメリカがますます金持ちになって、日本はますます貧乏になるだけではないだろうか。これでは、昔の中国のほうがはるかにましだ。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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