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ESG投資 欧州主導からの転換を

日本で急速に広がるESG投資。日本の政府や企業は基準策定に積極的にかかわるべきだ

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本で急速に広がるESG投資

 企業への投資に際して、財務数字に反映されない企業価値に注目する動きが強まっている。代表的なものは、環境、社会、企業統治に注目するESG投資である。

 ESG投資の基準は経験の長い欧州の評価機関の影響を受けてきた。しかし日本を含む他国の状況に合致しない場合もある。ESG投資の基準に、日本独自の評価をもっと取り込むべきではないか。

 ESG投資は欧州ではすでに運用資産の半分以上を占めているが、日本市場においても急速に拡大している。

 日本サステナブル投資フォーラムの調査によれば、日本でのESG関連投資は、2015年の26.7兆円から2018年の232兆円と8.7倍に増えている(下図)。

拡大

 特に最近は、投資家がESGの課題をとりあげて、企業との対話を深める機会が増えている。また企業の側でも、統合報告書などを通じて、ESGに関連した自社の戦略をわかりやすく開示する動きが広がっている。

 一部には、ESGへの取り組みが企業価値向上をもたらすのか、また社会の持続的発展につながるのか、懐疑的な見方をする投資家も存在するが、ESG投資は日本で着実かつ急速に広がっている。

欧州の価値観に基づく基準

 ESG投資が世界的な広がりとなったきっかけは、2015年。国連は貧困をなくすなど、全世界で取り組むべき課題を、持続可能な開発目標(SDGs)として全会一致で採択した。

 グローバルな社会課題に、官民が取り組むことで、より良い社会を創る、というコンセプトは広い支持を得ている。一方で、その目標を具体的にどう落とし込み実行していくのかについては、なお不確定な面も多い。

 ESG投資の基準は、これまでのところ欧州の投資家や評価機関が影響力を持ってきた。たとえば欧州を主要拠点とする国際資本市場協会(ICMA)は、環境を改善させる効果のある事業に投資する「グリーンボンド」の基準作りをリードしてきた。

拡大LookerStudio/shutterstock.com

 国境を越えた資金の流れを促進させるためには、シンプルで標準化した基準が望ましい。一方で発展段階や社会制度が異なる国に画一的な基準を適用すると、優先すべき政策が遅れたり、投資効果が十分にあがらないこともありうる。

 欧州委員会などが検討するサステナブル投資の基準は、欧州の価値観に基づき画一的な面がある。

 欧州委員会は、企業の活動を分類し、持続可能な発展に資する分野への資金を誘導し、さらには同分野に融資する銀行の自己資本規制を緩和することを検討している。またその基準をグローバルに発展させることを企図している。

 素案によれば自動車については炭素排出がゼロの燃料自動車と電気自動車が適格となり、ハイブリッド車は対象とならない。またエネルギー分野では再生可能エネルギーのみが適格となる。欧州の価値観をベースとする指針が、世界標準になるとすれば、基準を満たさない日本企業にとっての資金調達環境は厳しいものとなるだろう。

 因みに日本では、再生可能エネルギーが電力供給に占める割合は2013年度で11%に過ぎない。政府はこの比率を2030年度に22-24%に高める計画だが、送電系統の整備など課題は多い。

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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

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