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黄色いベスト運動のお気に入りはロシアメディア

「代表制」を信じない人をどうやって報道するのか

小林恭子 在英ジャーナリスト

「メディアから締め出されている」という主張

 この時、カウフマン氏は興味深いことに気づいた。黄色いベスト運動のデモ参加者は自分の方からメディアに取り上げられることを拒絶し、もっぱらソーシャルメディアを使っているものの、「主要メディアが自分たちを取り上げてくれない、メディアから締め出されている」と不満を言うようになったのだ。

 そこで、テレビ局大手はあわててスタジオに参加者を呼んでその主張を発信させた。「果たしてこれが最善の取り上げ方だったのかどうかは、分からない」。

 黄色いベスト運動のメディアに対する不信感は、一般市民の間でも共有されていた。キリスト教系日刊紙「ラ・クロワ」が行った世論調査によると、「ジャーナリストへの暴力は正当化される」と答えた人は23%に上った。

 カウフマン氏が思い出すのは、2005年に発生した、パリ郊外(「バンリュー」)の暴動事件だ。移民の第2・第3世代の若者を中心となった暴動で多くの公共施設が破壊され、乗用車が放火された。貧困層が住む郊外地域とほかの地域との格差が問題視された。「当時も、私たちはバンリューに入っていけなかった。間を取り持つ人がいて初めて、取材が可能になった」。

 トランプ米大統領がニューヨーク・タイムズやCNNを「フェイクニュース」と呼んで攻撃するようになっているが、「フランスはまだそこまで行っていない」とカウフマン氏。しかし、大物政治家がメディアの信頼性に疑問を投げかける発言をしているという。メディア報道が気に入らなかったからと言って、取材を拒否するサッカー・クラブも出てきた。

 「社会の一部に、メディアに対する敵意がある。私たちはこれに直面しながら、働いている感じがしている」。

メディアの信頼度は過去最低に

拡大マーティンケスラー氏(撮影Bartolomeo Rossi)
 ジャーナリストが舞台上でストーリーを語る「ライブ・ジャーナリズム」を欧州各国で開催する会社「ライブ・マガジン」の創業者フローレンス・マーティン=ケスラー氏が、メディアの信頼度を示す調査を紹介した。

 フランスのテレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのメディアに対する信頼度は25%だという。「過去30年間で、最も低い数字だ」。

 また、ジャーナリストと政治権力やお金の関係についても、市民の不信感が現れた。「ジャーナリストが政治圧力に抵抗できるかと聞かれ、『できる』と答えた人は24%だった」。「お金の圧力に抵抗できるか」という問いへの答えも同じ数字だった。

 マーティン=ケスラー氏によれば、黄色いベスト運動参加者には、「自分たちは権力から独立している」という思いがある。「デモ参加者は、億万長者がメディアを所有している、という。だから、メディアには『隠された意図がある』、と」。これがメディアに対する不信感につながっていく。

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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