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地域ビジネスプロデューサーが見た勝負の分かれ道

星野リゾートでビジネスを学び、有田焼窯元の再建に携わったプロデューサーのメソッド

南雲朋美 地域ビジネスプロデューサー 慶応大学・首都大学非常勤講師

地域のリサーチは「土」と「地形」と「歴史」から

 私は、地域で事業提案や政策提言を行うとき、まずは「土」、次に「地形」と「歴史」を見ることにしています。

 分かりやすくするために専門的なことを省略した「極論」で、考え方を説明してみます。

 まず「土」です。足元にある土を一つかみ、手でギュッと握り締めて固まるようであれば、そこの地域のお米は大体おいしいはずです。適度な粘土質の土は稲作に向いています。したがって、粘土質の土がある地域=米どころ、という仮説を立てることができます。

 次に「地形」を考えてみましょう。地図をみて、その地域が海に近ければ、「漁業」か「貿易」のどちらか、もしくは両方によって地域経済が成り立っていたと考えられます。交渉力に長けた政治家や事業家がいれば、「貿易」を興していたと思いますし、そうでなければ漁業で生計を立てていたのでしょう。

 三つ目の「歴史」。ここで言いたいのは、「土」や「地形」といった自然条件のほかに、人間の英知も見逃すことができないということです。良い土ではなく、立地が悪い地域でも、そこに人々が暮らしているのなら、過去に灌漑や肥料、土壌改良などの工夫をして、農作物の収穫高をあげる技術革新や政策、事業をリードしてきた人物による歴史がある可能性が高いということです。その土地の歴史的な話は、地域に残る文献を調べたり、地域を長きに見守ってきたような長老に聞いたりすると、インターネットの検索ではお目にかかれないような話に遭遇します。

 つまり、みなさんが取り組んでいる地域活性化や地方創生の一歩目は、なにはともあれ現地にいって、地域の名所を歩きまわり、自分の目で地域の特性を見極め、それにまつわるストーリーを編集から始めることだと思います。これが幹になり、枝を作り、葉を茂らせるものになります。

地域ビジネス1拡大Eivaisla/shutterstock.com

「地の利」をうまく使った薩摩藩

 もうすこし具体的に説明しましょう。

 江戸時代末期、幕府にとって薩摩藩(鹿児島県)の存在は脅威でした。幕府がある江戸から遠く離れたところにあるにもかかわらずに、です。薩摩が強い藩になったのは、そこに住む人々が他の地域の人々より優れていたからではなく、「地の利」があったからだと私は考えます。

 もちろん薩摩には島津斉彬や西郷隆盛のような優秀な人材がいたのは確かです。しかし、反論を恐れず言うなら「地の利」の良さが前提にあり、それをうまく使える優秀な人がいたという順序のほうが妥当だと感じるのです。

地域のリサーチは「土」と「地形」と「歴史」から

 鹿児島県を「土」「地形」「歴史」という切り口で分析してみます。

 鹿児島空港を上空から見下ろすと、平野部からそそり立つ台地を見ることができます。「シラス台地」と呼ばれています。この土地を歩く機会があったら、土をみてください。そして、ぜひ、その違和感に気がついていただきたいのです。

 シラス台地は約3万年前に鹿児島県北部でおきた大噴火で降り注いだ火砕流や火山灰が堆積してできた台地です。養分をほとんど含まず、水はけも良すぎるため、稲作には不向きです。また、鹿児島県は台風が多い県です。台風がくれば、背の高い作物は倒れてしまいます。そこで登場するのがサツマイモです。水はけのよい土質を好む作物で、風の影響を受けにくい土の中で育ちます。ゆえに鹿児島県のサツマイモはとても上質な逸品なのです。

 このサツマイモが芋焼酎になります。鹿児島県の地酒といったら芋焼酎、というのはシラス台地あってのたまもの、という必然があるのです。

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筆者

南雲朋美

南雲朋美(なぐも・ともみ) 地域ビジネスプロデューサー 慶応大学・首都大学非常勤講師

1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶応大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のプロデュースのほか、慶応大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。

 

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