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人口減少時代に向けた「デジタル政府」の構築を

マイナンバーの活用とキャッシュレス化の促進

土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

社会保障ゆるがす人口構造の変化

 新しい「令和」の時代が始まった。昭和天皇が崩御された「平成」の改元時は、服喪のため自粛ムードが社会全体を覆っていたのだが、今回は年越しイベントのようなにぎやかさだ。改元は人心を一新するといわれるが、それで「平成」の課題がリセットされるわけではない。

 「平成」から続く深刻な課題のひとつは、まぎれもなく少子高齢化と人口減少の進展だ。総務省が発表した今年4月1日現在の子どもの人数(15歳未満人口)は、前年より18万人少ない1533万人と過去最少を記録、子どもの数は平成の30年間に787万人も減少した。

 わが国の人口減少は人口が減ること以上に、少子高齢化という人口構造変化により現役世代の負担が相対的に増すことが重大だ。政府は社会保障制度を高齢者中心から全世代型へ転換を図り、幼児教育や保育を無償化する改正子ども・子育て支援法を成立させた。

 今年10月、社会保障の持続性を高めるために消費増税が予定されている。日本の少子高齢化という人口構造の変化を考えると、一定の国民負担を増やすことはやむを得ないが、むしろ重要なことは社会コストの低減をいかに図るかであろう。

「デジタル政府」目指すエストニア

Mehaniq/shutterstock.com
 今年3月、バルト三国を旅した。一番北に位置するエストニアは、人口130万人、面積は日本の九州よりやや広い程度だ。1997年ユネスコの世界遺産に登録された首都・タリンの旧市街地は、城壁に囲まれた美しい中世の街並みを残している。

 エストニアはなじみの薄い国だが、2013年に大相撲を引退した元大関把瑠都(カイド・ホーベルソンさん)の出身国だ。ちょうど旅行中に国政議会選挙があり、与党・中央党から出馬した同氏は落選の後、同じ選挙区の当選者の辞退により繰り上げ当選を果たした。

 この古い歴史的な街並みから、エストニアが世界有数のIT国家と想像する人は少ない。われわれもよく使うスカイプ(Skype)をつくった国なのだ。1991年旧ソビエト連邦からの独立以降は「電子政府」の構築を目指し、2004年にEU(欧州連合)およびNATO(北大西洋条約機構)に加盟、2008年にはNATOサイバー防衛協力センターが同国に設置された。

 エストニアの15歳以上の国民は、日本のマイナンバーカードのようなIDカードを有する。それは運転免許証、健康保険証、交通定期券などを兼ね備え、納税から薬剤の処方までほとんどの住民・行政サービスをカバーしているという。2005年の地方選挙以降は、国政議会選挙も含めて電子投票が導入されており、国外からでも投票ができるそうだ。

 エストニアがデジタル政府を推進する背景からは、近隣諸国の脅威から国家を守ること、人口密度の低い国土で行政サービスを効率的に提供すること等の国家戦略がうかがえる。旧ソ連時代には情報産業を担ってきたためにIT人材が豊富だったことも影響している。2014年には外国人に対してインターネット経由で行政サービスを提供する「電子居住権」(e-Residency)制度も導入している。

医療分野における「マイナンバーカード」の活用

 日本でも行政手続きの負担軽減や迅速化を図るために2016年1月「マイナンバー制度」が開始されたが、カードの普及はいまだ1割強にとどまっている。政府は2021年3月からマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする方針だ。医療控除を税務署に申告する場合、医療費を自動計算して確定申告のわずらわしさを軽減できるという。

 医療関連分野へのマイナンバーカードの活用は大きな影響があるだろう。個人カードに健康保険証機能が付くと、医療事務の効率化や電子カルテによる患者データの共有も可能だ。マイナンバーカードの活用は医療サービスの提供者にとってのメリットにとどまらず、サービス利用者の利便性を最大化することが重要だ。

 現在の「薬手帳」の情報も個人カードに集約されて適正な薬剤管理が実施されれば、二重投薬を防ぎ、薬剤費の削減も可能だ。時系列で検査結果を診ることで疾病予防にも有効で、健康ビッグデータを収集・分析すれば全国レベルで予防医療に生かすこともできよう。

 マイナンバー制度の運用においては、健康に関する個人情報の取り扱いに万全を期さねばならない。その上で、

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