「消費増税延期・同日選」への傾斜要因に
2019年05月28日
衆参両院議席の三分の二を維持し改憲案の国会発議を目指す政権にとって、消費増税による景気下押しとそれに伴う支持率低下は何としても防ぎたいところだ。改憲と消費増税の二正面作戦を回避しようとすれば、結局のところ改憲路線を優先し、「消費増税先送り解散による衆参同日選挙」の道を選ぶのではないか。
自衛隊は容認するが、それを憲法9条に書き込むのはどうか。よくわからないが、なんだか危険ではないか――。そうした国民の考えが、朝日、毎日、読売の3紙の世論調査結果に示された。自衛隊が災害救助などで国民から高い評価を受けても、そのことと改憲容認は分けて考えたいとの意思が読み取れる。
朝日新聞が5月3日付紙面で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけ郵送で実施、有効回答2043、回収率68%)の結果によれば、憲法9条を変える方がよいと思うかとの問いに「変えないほうがよい」は64%(昨年の朝日調査では63%)で、「変えるほうがよい」28%(同32%)を大きく上回った。
今の憲法を変える必要があるかどうかについては、「変える必要がある」38%に対して「変える必要はない」47%だった。なんとなく憲法のどこかは変えてよいと思う人でも、自衛隊の海外派兵への懸念などを抱えており、平和主義の象徴として戦争の歯止めになっている9条については変えたくないと答えた様子がうかがえる。
9条に自衛隊明記を提案している安倍首相の改憲案については「反対」(48%)が「賛成」(42%)を上回ったが、昨年同時期の調査(反対53%、賛成39%)に比べて差が縮小した。首相の改憲案については、9条を変えないほうがよいと答えた人の中から賛成に回る人も出ている様子がうかがえる。いまの自衛隊について憲法に違反していると思うかどうかの問いに対し、「違反している」は19%に過ぎず、「違反していない」69%だった。
今度の参議院選挙に合わせて衆議院を解散して、衆参同日選挙を行うことについては「賛成」42%、「反対」43%で拮抗した。
一方、読売新聞が5月3日朝刊で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけ郵送方式で実施。有効回答2103、回答率70%)によれば、憲法を「改正するほうがよい」は50%(昨年調査は51%)、「改正しない方がよい」は46%(同46%)で、改正賛成派が2年連続で反対派を上回った。憲法9条に自衛隊を明記する案については「賛成」47%、「反対」46%で、ほぼ並んだ。また、今夏の参院選で投票先を決める際に憲法への考え方を判断材料に「する」との回答が57%で半数を超えた。
しかし、憲法9条の項目ごとに改正の必要性を聞くと、戦争放棄を定めた1項については改正する必要が「ない」との回答が83%(前回82%)で、戦力不保持などを定めた2項については改正の必要が「ある」44%(同48%)、「ない」51%(同47%)で、1項、2項とも改正する必要がないという声が強い。
憲法9条をめぐる今後の対応についての回答では、「これまで通り、解釈や運用で対応する」40%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、第9条を改正する」35%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」19%だった。ここでは解釈や運用での対応を指示支持する人が多く、9条改正を選んだ人は少ない。9条を改正すべきではないとの意思が国民の間に根強いことを印象付ける結果となっている。
今後の対応への回答からは9条改正すべきでないとする意見が多いにもかかわらず、その中から自衛隊明記による改憲案に賛成する人が出ているとみられるわけで、これは設問に応じて回答が微妙に変化するという世論調査の一面を示しているとも考えられる。
毎日新聞は、5月3日朝刊に全国世論調査(電話方式で4月13、14日に実施。固定電話での回答501=回答率59%、携帯電話での回答555=回答率83%)の結果を掲載した。
安倍政権の間に憲法改正をすることへの賛否は、「反対」が48%で、「賛成」31%を上回った。
自衛隊明記による9条改憲案については、「賛成」27%、「反対」28%で割れたが、最多は「わからない」の32%だった。昨年4月調査と比較すると、反対が3ポイント減り、賛成は変わらず、「わからない」が3ポイント増えている。
朝日と読売が9条改憲については二者択一で賛否を質問しているのに比べ、毎日はあえて「わからない」という答えを用意して三者択一でたずねた。その結果は、国民の間で態度を決めかねる人や、そもそも自衛隊明記で何がどう変わるのかをよく理解できないという人々がかなり多く存在している様子がうかがえる。メディア・ジャーナリズムがこうした疑問に答えるような情報提供を1面連載やテレビの大型解説・特集、討論番組など目立つ形ではしてこなかったことも、
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