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世論調査が示す9条改憲と消費増税への反発

「消費増税延期・同日選」への傾斜要因に

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

拡大憲法改正の賛否を問う国民投票の際のテレビCM規制について、日本民間放送連盟から意見を聴取する衆院憲法審査会。多くの報道関係者や傍聴人が詰めかけた=5月9日
 憲法記念日を機に主要新聞社の世論調査結果が紙面化された。それを見ると、安倍晋三首相が2017年5月3日にぶち上げた「自衛隊明記」による9条改憲案に対しては、一定の支持があるものの、改憲への反発が根強いという結果が示された。同時期の世論調査では、安倍政権が推進する改憲路線の重荷となる消費増税について、反対意見がかなり優勢である。こうした状況は、景気の悪化とからんで政権を消費増税先送りに傾斜させる要因となる。

 衆参両院議席の三分の二を維持し改憲案の国会発議を目指す政権にとって、消費増税による景気下押しとそれに伴う支持率低下は何としても防ぎたいところだ。改憲と消費増税の二正面作戦を回避しようとすれば、結局のところ改憲路線を優先し、「消費増税先送り解散による衆参同日選挙」の道を選ぶのではないか。

 自衛隊は容認するが、それを憲法9条に書き込むのはどうか。よくわからないが、なんだか危険ではないか――。そうした国民の考えが、朝日、毎日、読売の3紙の世論調査結果に示された。自衛隊が災害救助などで国民から高い評価を受けても、そのことと改憲容認は分けて考えたいとの意思が読み取れる。

朝日調査で64%が「9条変えないほうがよい」

 朝日新聞が5月3日付紙面で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけ郵送で実施、有効回答2043、回収率68%)の結果によれば、憲法9条を変える方がよいと思うかとの問いに「変えないほうがよい」は64%(昨年の朝日調査では63%)で、「変えるほうがよい」28%(同32%)を大きく上回った。

 今の憲法を変える必要があるかどうかについては、「変える必要がある」38%に対して「変える必要はない」47%だった。なんとなく憲法のどこかは変えてよいと思う人でも、自衛隊の海外派兵への懸念などを抱えており、平和主義の象徴として戦争の歯止めになっている9条については変えたくないと答えた様子がうかがえる。

 9条に自衛隊明記を提案している安倍首相の改憲案については「反対」(48%)が「賛成」(42%)を上回ったが、昨年同時期の調査(反対53%、賛成39%)に比べて差が縮小した。首相の改憲案については、9条を変えないほうがよいと答えた人の中から賛成に回る人も出ている様子がうかがえる。いまの自衛隊について憲法に違反していると思うかどうかの問いに対し、「違反している」は19%に過ぎず、「違反していない」69%だった。

 今度の参議院選挙に合わせて衆議院を解散して、衆参同日選挙を行うことについては「賛成」42%、「反対」43%で拮抗した。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授

群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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