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世論調査が示す9条改憲と消費増税への反発

「消費増税延期・同日選」への傾斜要因に

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

読売調査は自衛隊明記に賛否が拮抗

 一方、読売新聞が5月3日朝刊で掲載した全国世論調査(3月から4月にかけ郵送方式で実施。有効回答2103、回答率70%)によれば、憲法を「改正するほうがよい」は50%(昨年調査は51%)、「改正しない方がよい」は46%(同46%)で、改正賛成派が2年連続で反対派を上回った。憲法9条に自衛隊を明記する案については「賛成」47%、「反対」46%で、ほぼ並んだ。また、今夏の参院選で投票先を決める際に憲法への考え方を判断材料に「する」との回答が57%で半数を超えた。

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 しかし、憲法9条の項目ごとに改正の必要性を聞くと、戦争放棄を定めた1項については改正する必要が「ない」との回答が83%(前回82%)で、戦力不保持などを定めた2項については改正の必要が「ある」44%(同48%)、「ない」51%(同47%)で、1項、2項とも改正する必要がないという声が強い。

 憲法9条をめぐる今後の対応についての回答では、「これまで通り、解釈や運用で対応する」40%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、第9条を改正する」35%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」19%だった。ここでは解釈や運用での対応を指示支持する人が多く、9条改正を選んだ人は少ない。9条を改正すべきではないとの意思が国民の間に根強いことを印象付ける結果となっている。

 今後の対応への回答からは9条改正すべきでないとする意見が多いにもかかわらず、その中から自衛隊明記による改憲案に賛成する人が出ているとみられるわけで、これは設問に応じて回答が微妙に変化するという世論調査の一面を示しているとも考えられる。

毎日調査は自衛隊明記に「わからない」

 毎日新聞は、5月3日朝刊に全国世論調査(電話方式で4月13、14日に実施。固定電話での回答501=回答率59%、携帯電話での回答555=回答率83%)の結果を掲載した。

 安倍政権の間に憲法改正をすることへの賛否は、「反対」が48%で、「賛成」31%を上回った。

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 自衛隊明記による9条改憲案については、「賛成」27%、「反対」28%で割れたが、最多は「わからない」の32%だった。昨年4月調査と比較すると、反対が3ポイント減り、賛成は変わらず、「わからない」が3ポイント増えている。

3つの調査から見えること

 朝日と読売が9条改憲については二者択一で賛否を質問しているのに比べ、毎日はあえて「わからない」という答えを用意して三者択一でたずねた。その結果は、国民の間で態度を決めかねる人や、そもそも自衛隊明記で何がどう変わるのかをよく理解できないという人々がかなり多く存在している様子がうかがえる。メディア・ジャーナリズムがこうした疑問に答えるような情報提供を1面連載やテレビの大型解説・特集、討論番組など目立つ形ではしてこなかったことも、

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授

群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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