犯罪報道に興味を示すアマゾン
なるほどメディアで取り上げられがちな事件や事故の方に、そしてそこにおける「取り上げられ方」に、人間の注意が向かってしまうということはあるのだろう。しかしそれの何が悪いのか?すべてではないにせよ、危険の一部にでも注意が向かうというのは良いことではないか?――そんな風に感じた方も多いに違いない。
メディアによる注意喚起が、良い結果につながる場合があることは否定しない。ただここで言いたいのは、私たちの世界に対する認識が、メディアによって左右される可能性があることを意識しなければならないという点だ。そこにどのようなリスクが潜むのか、IT大手のアマゾンが、最近進めているある動きから考えてみよう。
米国のアマゾン本社が自社の採用サイト「Amazon.jobs」に掲載した、こんな募集が注目を集めている(https://www.amazon.jobs/en/jobs/836421/managing-editor-news)。
肩書は「ニュース編集長(Managing Editor, News)」。オンラインショッピングのサイトに編集長?と思われたかもしれないが、アマゾンは小売以外にもさまざまな事業に手を伸ばしている。今回募集が行われているのは、Ringというサービスにおける仕事だ。
Ringは家庭用セキュリティ機器/サービスを提供している企業で、2012年にロサンゼルスで立ち上げられた。そして2018年2月にアマゾンに買収され、同社の傘下で事業を続けている。
彼らは防犯カメラなどの機器類を提供する一方で、「Neighbors(ご近所さん)」という名前のアプリを提供している。これは特定の地域を選択すると、その地域内で発生している犯罪の情報や、不審者の目撃情報などをリアルタイムで共有してくれるというもの。情報源は法執行機関のほか、Ringの運営チーム、そしてアプリのユーザー自身となっている。
https://www.youtube.com/watch?v=vvON6j_gZqs
(創業者James Siminoffによる紹介ビデオ。コミュニティ内の住民が警戒情報をシェアできる点を強調している。)
こうしていち早く送られてくるローカルな情報を利用することで、ユーザーは早期警戒が可能になり、犯罪を防ぐことができるというのがRingの主張だ。このようにRingは、防犯のための機器に加えて「情報」も顧客に提供しているというわけである。