ワイドショー的姿勢への懸念
そこで今回の募集だが、前述の採用サイトでは、その職務内容が次のように解説されている。
「ニュース編集長はRing内において、近隣住民に犯罪速報を配信するニュース編集チームを管理するという、エキサイティングな新しい機会に取り組みます。この役職は、ジャーナリズム、犯罪報道、人事管理の経験と情熱を持つ候補者に最適です。この役職において成功するために不可欠なコアスキルは、パンチ力のあるストーリーテリングを行える才能と、有益なコンテンツを嗅ぎ分ける嗅覚です。候補者は、いま急速に進化と成長を続けている、ダイナミックで新しいメディアを相手にするニュースチームの一員となることに、情熱を傾けられる人物である必要があります。」
Ringの顧客に防犯に役立つ情報を提供する、その際の3つの情報源である法執行機関、ユーザー自身、そしてRingのうち、Ringがもたらすコンテンツをより「魅力的」なものにする――それが今回募集されている役職の仕事と言えるだろう。ちなみに応募の際の必須条件として、「ニュース速報、犯罪報道、編集業務で5年以上の経験」が求められている。
「魅力的」なコンテンツをつくるのが仕事、というのは言い過ぎだろうか。しかし「パンチ力のあるストーリーテリング」や「コンテンツを嗅ぎ分ける嗅覚」という職務内容からは、犯罪について冷静な報道をするというよりも、ワイドショー的な話題性重視の姿勢がうかがえる。Ringがセキュリティ機器の販売をビジネスとしている会社であり、さらに親会社のアマゾンが「ユーザーがより興味を持ちそうなものを提供する」という姿勢で小売業を拡大してきた会社であることを考えると、そうした姿勢を強くするのではないかという懸念はぬぐえないだろう。
また別の観点からも、ローカルな犯罪情報を不用意に共有することへの不安が示されている。それは社会全体への不安感を煽ったり、厳罰を望む声を高めてしまったりするのではないかという懸念だ。