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トランプ強気の背景

 もし、トランプ大統領が言うように、中国が本当に約束を違えたのだとしても、ここまで強硬な姿勢に転じた背景には、これまでの関税引き上げにもかかわらず堅調さを維持する米国経済の強さがあることは間違いない。

 第1弾から第3弾までの関税引き上げによって、米国では中国向けの輸出が昨年10月に前年比で3割以上落ち込んだが、その後は最も影響の大きい大豆の輸入を中国が再開したこともあり、今年3月には落ち込み幅が半減している。米国において中国向け輸出のシェアは1割に満たないため、その影響は結局、輸出全体を1~2%押し下げる程度に過ぎなかったわけである。また、輸出よりも悪影響が懸念されていた中国からの輸入品の価格上昇についても、第3弾の追加関税10%は人民元の1割程度の下落で概ね吸収できることもあり、その影響は今のところ限定的である。

 一方で、中国では、米国向け輸出の落ち込みが、3月に前年比2割近くへ拡大している。関税引き上げ前の駆け込み輸出の反動に加え、米国向けの主力である電気機器や情報通信機器、パソコンを中心に台湾への生産移転が進んでいるためである。中国の輸出に占める米国向け輸出のシェアは約2割につき、輸出は全体で米国の2倍以上となる4%程度押し下げされ、さらに製造業の設備投資が急減速していることも考慮すると、米国を大きく上回るダメージを受けているとみてよいだろう。トランプが強気になるのも無理ない状況である。

今後は米国にも無視できないダメージ

 ただ、米国にとっても今回は第3弾分の追加関税を10%から25%へ引き上げたため、人民元の下落では吸収しきれない。そのため、物価への影響は避けられないだろう。しかも、第3弾の規模は2,000億ドルと大きい。その中には消費財が2割以上含まれており、輸入元を中国から他国へ簡単にはシフトできず、値上げを余儀なくされるものもある。既に関税10%の段階で家具などの物価が上昇しているが、25%となれば、値上がりするものは当然増えるだろう。

 さらに、第4弾は残り全ての輸入品が対象となり、消費財の割合は4割にも達する。その中には、スマートフォンやパソコンなど、他国では価格の安さでも生産量の大きさという面でも簡単に代替できないものが少なくない。もちろん、他国への生産シフトのほか、他国企業がその需要を取り込もうとする動きは出るだろうが、生産体制を整えるには相当な時間がかかる。少なくともそれまでの間、

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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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