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ローマはニューヨークより生き生きとしていた

貧富の格差が見えてしまうニューヨーク。ローマは目立った貧困が見えなかった

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

拡大Vladimir Sazonov/shutterstock.com

福祉政策が行き届く欧州

 そして、ローマ。観光シーズンだったこともあって、多くの旅行者達であふれていた。ニューヨークに比べてローマは生き生きとしているように感じられた。かつての古代ローマの遺跡は美しく整備され、観光客であふれていたし、少なくとも、筆者が歩いた範囲では、めだった貧困は見られなかった。

 イタリアだけではなく、多くのヨーロッパ諸国では福祉政策が行き届いていて、目立った貧困は、少なくとも街の表面には出てきていないし、又、街全体が美しく整備されているように思えるのだ。

 自由競争を重視する市場国家アメリカと高福祉・高負担政策で福祉政策が充実しているヨーロッパとの違いなのだろうか。平均20%と高い消費税率を課してるヨーロッパ諸国だが、その財源で福祉政策を充実させているという訳なのだ。

 高福祉、高負担の典型はフィンランド、スウェーデン等の北欧諸国だが、ドイツ・フランス・イタリア等の国々も北欧程ではないが、20%前後の消費税を財源に福祉政策を充実させているのだ。

 高福祉・高負担の大きな政府がいいのか、低負担・低福祉の小さな政府がいいのかは議論が分かれるところだが、先進国の中では、アメリカが小さな政府の典型で、北欧諸国が大きな政府の典型だといえるのだろう。他のヨーロッパ諸国・ドイツ・フランス・イタリア等もそこそこ大きな政府を有しているといっていいのだろう。

 そして、ローマの街を歩いていて感じるのは長い歴史の重みである。様々な遺跡が美しく整備され、人々はその歴史や伝統に誇りを持っているように思えるのだ。新興経済大国アメリカとはかなり異なったメンタリティーだと言うこともできるのだろう。


筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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